「糖尿病ってどんな病気?」
「インスリン注射薬にはどんな種類がある?」
このような疑問を持っている人は少なくないのではないでしょうか。
本記事では、1型糖尿病と2型糖尿病の違いや、糖尿病の合併症について徹底解説。
インスリン注射薬の種類や、注意すべきポイントも詳しく紹介します。
本記事を読めば、糖尿病やインスリン注射薬について理解を深められます。
興味がある人はぜひ最後までご覧ください。
血糖値に関わるホルモン
ヒトが活動するためのエネルギー源として、最も利用されているのが「グルコース」です。
血液検査で調べられる血糖値とは、血液中のグルコース濃度を指しています。
血糖値の上昇や下降には、いくつかのホルモンが関わっています。
どのようなホルモンが関与しているのか見ていきましょう。
血糖値を上げるホルモン
血糖値を上げる作用を持つホルモンは以下の通りです。
| ホルモン | 分泌器官 |
|---|---|
| グルカゴン | 膵臓のランゲルハンス島α細胞 |
| カテコールアミン | 交感神経、副腎髄質 |
| コルチゾール | 副腎皮質 |
| 成長ホルモン | 下垂体前葉 |
これらのホルモンは、グリコーゲンの分解や糖新生を促進して血糖値を上げます。
※グリコーゲン:グルコースが多数結合して肝臓に貯蔵されたもの
※糖新生:アミノ酸や乳酸などを原料として体内でグルコースを合成すること
血糖値を下げるホルモン
先ほど紹介したように、血糖値を上げるホルモンは複数存在します。
しかし、血糖値を下げる作用を持つホルモンは、膵臓の「ランゲルハンス島β細胞」から分泌されるインスリンしかありません。
インスリンの具体的な作用は以下の通りです。
- 筋肉や脂肪組織における糖の取り込み促進
- 肝臓や筋肉でのグリコーゲンの合成促進
- 肝臓における糖新生の抑制
以上の作用を通じて、インスリンは血糖値を下げているのです。
糖尿病とは?
糖尿病は、インスリンが分泌されなくなったり(インスリン分泌障害)、インスリンが効きにくくなったり(インスリン抵抗性亢進)して、血糖値が慢性的に高くなる疾患です。
その病態から、1型糖尿病と2型糖尿病に分類されます。
| 1型糖尿病 | 2型糖尿病 | |
|---|---|---|
| 症状 | 口渇、多飲、多尿、体重減少、様々な合併症 | |
| 割合 | およそ5~10% | 90%以上 |
| 患者さんの特徴 | 主に小児~思春期 正常~やせ体型 | 主に中高年 正常~肥満体型 |
| リスク因子 | 自己免疫・遺伝因子など | 遺伝因子・生活習慣 |
| 糖尿病の家族歴 | 少ない | 高頻度 |
| インスリン分泌障害 | 高度 | 軽度~中等度 |
| インスリン抵抗性亢進 | なし | あり |
| 糖尿病の進行 | 改善せず進行する | 改善する可能性がある |
| 症状の進行 | 急激に出現しやすい | 緩徐に進行しやすい |
| インスリン注射薬の必要性 | 初期は非依存性のこともあるが、最終的には依存性 | 非依存性が多いが、重症化すれば依存性 |
糖尿病の合併症
糖尿病の合併症として、代表的な疾患は以下の通りです。
- 糖尿病神経障害
- 糖尿病足病変
- 糖尿病網膜症
- 糖尿病腎症
- 虚血性心疾患
- 脳梗塞
- 糖尿病昏睡
それぞれについて見ていきましょう。
糖尿病神経障害
糖尿病神経障害は、糖尿病の三大合併症のひとつで、もっとも早期に現れやすい症状です。
慢性的な高血糖が続くことで、神経細胞の代謝異常や血管障害が起こり、結果として神経がダメージを受けると考えられています。
初期には、夜間に強くなるしびれや痛みがみられ、進行すると感覚が鈍くなる場合が多いです。
自律神経が障害され、起立性低血圧(立ちくらみ)や脈の異常、排尿トラブルや下痢・便秘などが生じることもあります。
糖尿病足病変
糖尿病足病変は、神経障害や血流の悪化がある部位に、外傷や感染が重なることで発症します。
みられる症状は、爪白癬(爪の水虫)や皮膚の乾燥、足の変形や潰瘍(皮膚の欠損)など様々です。
進行すると、重篤な感染を起こし、最悪の場合は足の切断が必要となります。
生活の質を大きく下げてしまうため、早期の発見と治療がとても重要です。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症も三大合併症のひとつで、糖尿病患者の約35%にみられます。
発症には糖尿病の罹患後、数年~20年ほどかかることが多く、初期には自覚症状がほとんどありません。
以下のような症状が出た場合は、すでに網膜症がかなり進行している可能性があります。
- 飛蚊症(視界に黒い影が飛ぶ)
- 視力低下
- 視野の欠け
- 失明
糖尿病と診断されたら、症状がなくても定期的に眼科を受診することが大切です。
糖尿病腎症
糖尿病腎症も三大合併症のひとつで、糖尿病を発症してから5~10年以上経過した方に多くみられます。
初期には症状が出にくいですが、進行すると次のような症状が現れます。
- 蛋白尿
- 浮腫(むくみ)
- 貧血
- 全身のだるさ
最終的には腎臓の機能がほとんど失われ、透析が必要になることもあります。
実際、日本で透析が始まる原因の第1位は糖尿病腎症です。
虚血性心疾患
糖尿病による血管障害は、心臓に酸素などを供給している血管「冠動脈」にも及びます。
冠動脈が狭窄・閉塞することで、以下の疾患が生じます。
| 疾患 | 病態 | 症状 |
|---|---|---|
| 狭心症 | 冠動脈が狭窄する | 前胸部の圧迫感や締め付けられるような痛み |
| 心筋梗塞 | 冠動脈が閉塞する | 強い胸の痛み、吐き気、息苦しさなど |
脳梗塞
糖尿病による血管障害は、脳梗塞のリスク因子でもあります。
脳梗塞の主な症状は以下の通りです。
- 片側の手足の麻痺やしびれ
- 言葉が出にくい
- 視覚や感覚の異常
治療が遅れると後遺症が残りやすくなるため、早期の治療開始が求められる疾患です。
糖尿病昏睡
ここまでは、慢性的な合併症について説明してきました。
しかし、糖尿病では急性の重篤な合併症として、糖尿病昏睡を起こすこともあります。
糖尿病昏睡とは、急激な高血糖により意識が低下し、場合によっては命に関わる疾患です。
主な原因は、糖尿病治療の自己中断や感染症、強いストレスや重度の脱水などです。
糖尿病の治療
糖尿病の治療は、インスリン依存状態か否かで異なります。
| 定義 | 治療法 | |
|---|---|---|
| インスリン依存状態 | インスリンがほとんど分泌されないため、インスリン注射薬が必要不可欠な状態 | インスリン注射薬、食事療法、運動療法 |
| インスリン非依存状態 | インスリンがある程度分泌されるため、インスリン注射薬が必要不可欠ではない状態 | 食事療法、運動療法、薬物療法(血糖コントロールが不良の場合)、インスリン注射薬(血糖コントロールが不良の場合) |
インスリン注射薬の種類
正常のインスリン分泌は、常に一定量が分泌される「基礎分泌」と、食後の血糖値上昇に応じて大量に分泌される「追加分泌」から成り立っています。
そして、それぞれの分泌を補うためのインスリン注射薬が使用されています。
| インスリン分泌 | 対応するインスリン注射薬の分類 |
|---|---|
| 追加分泌 | 超速効型、速効型 |
| 追加分泌&基礎分泌 | 混合型、配合溶解型 |
| 基礎分泌 | 持効型、中間型 |
具体的には、以下のようなインスリン注射薬が用いられています。
| 分類 | 一般名 | 効果が出るまでの時間 | 効果が最大の時間 | 効果の持続時間 |
|---|---|---|---|---|
| 超速効型 | インスリンアスパルト | 10~20分 | 1~3時間 | 4~5時間 |
| インスリンリスプロ | 15分未満 | 1~3時間 | 約5時間 | |
| インスリングルリジン | 15分未満 | 1~3時間 | 約5時間 | |
| 速効型 | 生合成ヒト中性インスリン | 約30分 | 1~3時間 | 約8時間 |
| インスリンヒト | 30分~1時間 | 1~3時間 | 5~7時間 | |
| 混合型 | 二相性プロタミン結晶性インスリンアナログ水性懸濁 | 10~20分 | 1~4時間 | 約24時間 |
| インスリンリスプロ混合製剤 | 15分未満 | 30分~6時間 | 18~24時間 | |
| ヒト二相性イソフェンインスリン | 約30分 | 2~8時間 | 約24時間 | |
| 配合溶解型 | 溶解インスリンアナログ | 10~20分 | 1~3時間 | 42時間超 |
| 中間型 | ヒトイソフェンインスリン水性懸濁 | 約1.5時間 | 4~12時間 | 約24時間 |
| 持効型溶解 | インスリンデテミル | 約1時間 | 3~14時間 | 約24時間 |
| インスリングラルギン | 1~2時間 | 明らかなピークなし | 約24時間 | |
| インスリンデグルデグ | 1~2時間 | 明らかなピークなし | 42時間超 | |
| 週1回持効型 | インスリンイコデク | 不明 | 明らかなピークなし | 1週間超 |
インスリン注射薬の使い方
インスリン注射薬の投与方法には皮下注射・筋肉内注射・静脈内注射がありますが、通常は消毒後に皮下注射を行います。
ほとんどの患者さんで使用されているのが、使い捨ての針を装着して必要なインスリン量に合わせるだけでよい、ペン型注射器です。
注射する場所により、インスリンの吸収速度は異なります。
吸収が速い、運動の影響を受けにくい、温度変化が少ないといった理由から、腹壁への注射が最も適しています。
ただし、毎回同じ場所に注射すると吸収効率が低下してしまうため、少しずつ注射部位を移動させなければなりません。
インスリン注射薬の注意点
インスリン注射薬の注意点として、以下の2つを紹介します。
- sick day
- 副作用
それぞれについて見ていきましょう。
sick day
風邪や胃腸炎などで普段通りに食事が摂れない日のことを、「sick day」と言います。
グルコースの摂取量が減るsick dayでは、インスリン注射薬の投与量を減らした方が良い場合も少なくありません。
そのような状況に備えて、主治医と患者さんの間で予め決めておくルールのことを、「sick day rule」と言います。
著しい高血糖を引き起こす恐れがあるため、自己判断でインスリン注射薬の投与を中止してはいけません。
副作用
インスリン注射薬の副作用として以下が挙げられます。
- 低血糖
- 体重増加
- インスリンアレルギー
- 注射部位の脂肪組織の萎縮
- 注射部位の脂肪組織の肥大
これらの副作用がみられた際は主治医に相談してみましょう。
まとめ:インスリン注射薬で糖尿病を治療しよう
糖尿病は、インスリンの作用不足により慢性的な高血糖が続く疾患です。
口渇や多飲などの症状の他、様々な合併症が引き起こされます。
糖尿病に対して用いられているインスリン注射薬は、効果が出る時間や最大となる時間から分類されています。
注意点に気を付けつつ、インスリン注射薬で糖尿病を治療しましょう。
