「認知症ではどんな症状がみられるの?」
「抗認知症薬が作用するメカニズムは?」
このような疑問を持っている人は少なくないのではないでしょうか。
本記事では、代表的な4つの認知症について症状や経過を詳しく紹介します。
抗認知症薬のコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬が、認知症に対して作用するメカニズムも徹底解説。
本記事を読めば、認知症や抗認知症薬について理解を深められます。
興味がある人はぜひ最後までご覧ください。
認知症とは?
認知症とは、脳の知的機能(認知機能)が低下し、日常・社会生活に支障をきたしている状態のことです。
認知機能とは、一度正常に発達した「記憶」「学習」「判断」「計画」などです。
日本における認知症患者の数は、高齢化が進行するにつれて急増しています。
65歳以上の7人に1人、85歳以上の2人に1人が認知症であると報告されており、今後もますます増加していくと考えられています。
もの忘れと認知症の違い
私たちは年を重ねるにつれて、自然ともの忘れが増えてきてしまいます。
これは認知症ではなく、自然な老化現象の一つです。
一方、認知症は明らかな身体的疾患であり、単なるもの忘れとは大きく異なります。
それぞれの違いは以下の通りです。
| 加齢が原因のもの忘れ | 認知症 | |
|---|---|---|
| 忘れる内容 | 体験の一部を忘れる 例)食事内容を忘れる |
体験の全部を忘れる 例)食事したこと自体を忘れる |
| 自覚 | 忘れている自覚があり、思い出そうとする | 忘れている自覚がない |
| 日常生活 | 支障はほとんどない | 支障がある |
| 進行 | 悪化はほとんどみられない | 悪化していく |
| その他の症状 | 特になし | ・いつも同じ服を着ている ・段取りよく動けない |
認知症の症状
認知症の症状は、中核症状と行動・心理症状(BPSD)に大別されます。
それぞれについて見ていきましょう。
中核症状
中核症状は、脳に発生した障害により直接起こる症状であり、認知症患者に必ずみられます。
具体的な症状は以下の通りです。
| 記憶障害 | 新しいことを覚えられなくなるなど (認知症の原因により異なる) |
|---|---|
| 見当識障害 | 時間→場所→人物の順に正しく認識できなくなっていく |
| 失語 | 読む・書く・話す・聞くという言語機能が失われる |
| 失行 | 実行する意志があるにもかかわらず正しい動作ができない |
| 失認 | 感覚機能や注意力などに異常がないにもかかわらず対象を認知できない |
| 遂行機能障害 | 物事を段取りよく進められなくなる |
行動・心理症状
行動・心理症状とは、中核症状に付随して引き起こされる二次的な症状です。
具体的には、以下のような症状がみられます。
- 不眠
- 依存
- 過食
- 異食
- 徘徊
- 不潔行為
- 興奮・暴力
- 不安・焦燥
- うつ状態
- 幻覚・妄想
中核症状よりも個人差が大きく、環境にも左右されます。
適切な治療や対応により、症状の改善も期待できます。
認知症の原因
認知症を引き起こす原因は様々ですが、脳組織の変性によって起こる変性性認知症と、脳血管の障害(出血や梗塞)によって起こる血管性認知症に分けられます。
変性性認知症にもいくつかの種類があり、代表的なものは以下の通りです。
- アルツハイマー型認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症
以上の認知症のうち、最も頻度が高いのがアルツハイマー型認知症です。
次いで、血管性認知症やレビー小体型認知症が多くみられます。
代表的な認知症
認知症の症状は原因によって違いがあります。
代表的な認知症について詳しく見ていきましょう。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、大脳に全般的な萎縮がみられる認知症です。
65歳未満で発症した場合を「アルツハイマー病」、65歳以上で発症した場合を「アルツハイマー型老年認知症」と呼び分けることもあります。
アルツハイマー型認知症において特徴的な症状が、物を盗まれたと訴える「物盗られ妄想」です。
「いつ、どこで、何をした」という一連の記憶が欠落するためにみられます。
「大事な物を自分でしまった」という体験を忘れ、欠落した記憶を取り繕うために、「盗まれた」という妄想を作り上げてしまうというわけです。
続いて、アルツハイマー型認知症の経過を見ていきましょう。
| 経過 | 脳の変化 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 初期(1~3年) | 海馬(記憶を司る場所)が萎縮する | 新しい事柄を覚えられない 時間の感覚が不確かになる 物盗られ妄想 自発性が低下する |
| 中期(2~10年) | 側頭葉・頭頂葉が萎縮する | 古い記憶も失われていく 自宅の場所を忘れる 徘徊 失語、失行、失認 介助が必要になるが深刻さに乏しい |
| 後期(8~12年) | 大脳全般が萎縮する | 記憶をほとんど失う 意思疎通ができなくなる 家族を認識できなくなる 尿便失禁 異食 最終的には寝たきりとなる |
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、老年期に発症しやすい認知症です。
特徴的な症状として、以下の3つが挙げられます。
| 繰り返す幻視 | 存在しない人、虫、小動物などが見える、「部屋に知らない子たちがいる」など |
|---|---|
| パーキンソニズム | 無動(動作が緩慢)や筋強剛(筋肉のこわばり)、姿勢保持障害(転びやすい)など |
| REM睡眠行動障害 | REM睡眠時の行動異常や手足の暴力的な運動、大声の寝言など 悪夢を伴いやすい |
レビー小体型認知症の特徴として、症状の変動がみられやすい点が挙げられます。
数分~数時間の日内変動だけでなく、数週間~数ヵ月に及ぶ変動もみられます。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症とは、40~60歳代の初老期に発症しやすい認知症です。
経過ごとでみられる、特徴的な症状は以下の通りです。
| 初期 | ・自発性が低下する ・脱抑制(反社会的な行動、倫理観の低下) ・人格変化 |
|---|---|
| 中期 | ・常同行動(同じ行動を繰り返す) ・考え無精(質問に対して真面目に答えない) ・滞続言語(質問に対して同じ言葉を答え続ける) |
| 後期 | 寝たきりとなる |
血管性認知症
血管性認知症は、ここまで紹介してきた認知症とは異なり、脳梗塞や脳出血が原因となって発症します。
リスク因子として挙げられるのは、高血圧や糖尿病、脂質異常症や喫煙などです。
血管性認知症の大きな特徴は、認知機能の低下が段階的に進んでいく点です。
脳梗塞が発生するたびに、認知症が進行していきます。
また、脳出血により一気に悪化する場合もあります。
症状にムラがある点も、血管性認知症の特徴です。
障害された脳血管の部位に応じて症状が現れるため、認知機能の低下度合いに大きな差がみられます。
血管性認知症でよくみられる症状が、少しの出来事で泣いたり笑ったりする「情動失禁」です。
情動失禁が起こりやすい理由は明確にはわかっていませんが、感情をコントロールする部位で脳梗塞が起こりやすいためと考えられています。
抗認知症薬の種類
認知症の進行を抑制するために、以下の抗認知症薬が使用されています。
| 分類 | 薬剤 | 適応となる疾患 | 適応となる進行度 | 主な副作用 |
|---|---|---|---|---|
| コリンエステラーゼ阻害薬 | ドネペジル | ・アルツハイマー型認知症 ・レビー小体型認知症 ・血管性認知症(保険適用外) |
軽度~高度 | 消化器症状 |
| ガランタミン | ・アルツハイマー型認知症 ・レビー小体型認知症(保険適用外) ・血管性認知症(保険適用外) |
軽度~中等度 | ||
| リバスチグミン | ・アルツハイマー型認知症 ・レビー小体型認知症(保険適用外) ・血管性認知症(保険適用外) |
・消化器症状 ・皮膚症状 |
||
| NMDA受容体拮抗薬 | メマンチン | ・アルツハイマー型認知症 ・血管性認知症(保険適用外) |
中等度~高度 | ・めまい ・頭痛 ・傾眠 ・便秘 |
コリンエステラーゼ阻害薬同士は、作用するメカニズムが同じであるため併用しません。
一方、コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬の併用は、作用するメカニズムが異なるため、さらなる治療効果が期待できます。
抗認知症薬が作用するメカニズム
コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬が作用するメカニズムについて、それぞれ見ていきましょう。
コリンエステラーゼ阻害薬
記憶の形成に関わっていると考えられているのが、神経伝達物質の「アセチルコリン」です。
アセチルコリンは「マイネルト基底核」という場所で産生され、「コリンエステラーゼ」という物質により分解されます。
アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症の患者さんでは、マイネルト基底核の変性や脱落により、アセチルコリンの産生が低下しています。
しかし、コリンエステラーゼによる分解量は変わらないため、記憶の形成に関与するアセチルコリンの量が減ってしまうのです。
そこで使用されるのが、コリンエステラーゼによる分解を抑制するコリンエステラーゼ阻害薬です。
アセチルコリンの量を保つことで、記憶の形成を改善します。
NMDA受容体拮抗薬
ヒトの脳内で働いている神経伝達物質は、アセチルコリンだけではありません。
代表的な神経伝達物質が、脳細胞の表面にある「NMDA受容体」という組織を活性化する、「グルタミン酸」です。
NMDA受容体が活性化されると、カルシウムイオンが細胞内に流入し、脳細胞を刺激します。
アルツハイマー型認知症の患者さんでは、グルタミン酸の濃度が持続的に上昇しています。
そのため、NMDA受容体が必要以上に活性化されるのです。
その結果、カルシウムイオンが過剰に流入して脳細胞を傷害してしまいます。
そこで使用されるのが、NMDA受容体の働きを抑制するNMDA受容体拮抗薬です。
過剰なカルシウムイオンの流入を防ぐことで、脳細胞への傷害を抑制します。
また、カルシウムイオンによる脳細胞への刺激が正常となることで、正常な記憶の形成に寄与します。
まとめ:抗認知症薬で認知症の進行を抑制しよう
認知症は、認知機能が低下することで日常・社会生活に支障をきたす疾患です。
代表的な認知症として、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症や血管性認知症があります。
抗認知症薬として、コリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬が用いられています。
これらの薬剤を使用して、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の進行を抑制しましょう。
