効果効能

ミノロックス50mg(ミノサイクリン)の作用機序

ミノサイクリンは、テトラサイクリン系抗生物質に分類される薬剤で、主に細菌のタンパク質合成を妨げることで効果を発揮します。

細菌のタンパク質合成を阻害

ミノサイクリンは、細菌の中にある「タンパク質を作る工場(リボゾーム)」の一部にぴったりくっついて、材料を運ぶtRNAが入る場所(A部位)をふさぎます。
その結果、細菌は新しいタンパク質を作れなくなり、増えることができなくなります(これを「静菌作用」と言います)。
さらに、濃度が高くなると細菌の膜をこわしてしまい、細菌自体を死滅させることもあります(殺菌作用)。

脂溶性が高く「届きにくい所」にもしっかり浸透

同じテトラサイクリン系でもミノサイクリンは特に脂溶性が高い薬剤です。
血液脳関門や皮脂腺、前立腺など薬剤が入りにくい部位、さらにクラミジア・リケッチアなど細胞内に潜む菌までカバーできるのが強みです。

「炎症も鎮める」プラスα効果

ミノサイクリンは、炎症にかかわる免疫細胞(好中球)の働きをおさえたり、炎症を引き起こす物質(サイトカイン：IL-1βやTNF-αなど)の分泌を減らす作用があります。
そのため、赤く腫れたニキビや、慢性副鼻腔炎などで見られる腫れやかゆみをやわらげる効果も報告されています。
抗菌作用だけでなく、炎症を鎮める働きがあることがミノサイクリンの特徴のひとつです。

ミノロックス50mg(ミノサイクリン)の適応症

ミノロックス50mg(ミノサイクリン)の適応症は以下の通りです。

呼吸器感染症

ミノサイクリンは、肺炎球菌やインフルエンザ菌といった一般的な起因菌だけでなく、細胞壁を持たないマイコプラズマや細胞内で増えるクラミジアにも作用します。

また、脂溶性が高いため、気道の奥や副鼻腔粘膜へ薬剤がしみ込みやすい特徴があります。
副鼻腔炎でも菌を抑えつつ粘膜の腫れを和らげるので、鼻づまりや後鼻漏の改善が速い点が特徴です。

• 咽頭・喉頭炎
• 急性気管支炎
• 肺炎　など

皮膚・軟部組織感染症

炎症を起こす原因であるアクネ菌に対してしっかり効くうえに、炎症そのものを抑える力もあります。
特に、赤くはれたり膿がたまったりする「炎症性ニキビ」に対して効果が高く、中等症以上のニキビでは内服薬としてよく使われます。

さらにミノサイクリンは、身体の中から薬剤が届きやすく、顔だけでなく胸や背中など広い範囲のニキビにも対応できるというメリットがあります。
また、アクネ菌が薬剤に強くなる「耐性菌」が出にくいとされており、治療効果が安定している点も評価されています。
こうした理由から、ミノサイクリンは外用薬(塗り薬)だけでは改善しにくい、炎症の強いニキビに対して、内服治療の第一選択肢として用いられることが多いです。

• ニキビ(炎症性ざ瘡)
• 深在性皮膚感染症
• 慢性膿皮症　など

泌尿器・生殖器感染症

クラミジアやマイコプラズマといった細胞内寄生菌は、人の細胞の中で増殖するため薬剤が届きにくいのが難点ですが、ミノサイクリンは細胞膜を通過して内部まで入り込み、タンパク質合成を止めて増殖を阻止します。
胆汁排泄が主体のため腎機能が低下している患者でも用量調整がほとんど不要で、高齢者や慢性腎臓病の方にも選択しやすい医薬品です。

• 膀胱炎
• 尿道炎
• 前立腺炎　など

リケッチア・スピロヘータ感染症

リケッチアやスピロヘータによる感染症は、ダニやマダニを介して山や野外で感染することが多く、「珍しい感染症」と思われがちですが、適切な抗菌薬を選べば十分に治療が可能です。
ミノサイクリンは脂に溶けやすい性質(脂溶性)を持ち、身体の奥深くの組織や細胞の中までしっかり届くため、原因菌に素早く作用して発熱などの症状を速やかに改善します。

また、点滴を使わず飲み薬だけで治療を完了できるため、外来でも扱いやすく、旅行帰りの発熱や野外活動後に発疹が出た場合などに、第一選択薬として活用されることが多くあります。

• ツツガムシ病
• オウム病　など

適応症別のミノロックス(ミノサイクリン)有効率

日本国内で実施された3,914症例における一般臨床試験の概要は以下のとおりです。

これらの疾患では、原因となる微生物が細胞内で増殖する傾向があり、細胞内に移行しやすいミノサイクリンの性質が、治療に適していると考えられています。

参考： ミノマイシンカプセル「臨床成績」 - KEGG

使用方法

服用の際は、以下の方法を守ってください。

ミノロックス50mgの飲み方(用法・用量)

服用時のポイント

服用期間を必ず守る

ニキビ治療は1～3ヵ月、クラミジア感染症は1週間、慢性副鼻腔炎は10～14日間など、それぞれの服用日数をきちんと飲み切ることが、耐性菌を生ませない最大のポイントです。

めまい対策

服用を開始した時期に、めまいがあらわれることがあります。
そのため、最初に服用する際は体調の変化に注意しながら様子を見るようにしてください。
また、めまいが治まるまでは、自動車の運転や高い場所での作業など、注意力やバランス感覚が必要な行動は控えていただくことをおすすめします。

食事との関係

牛乳などの乳製品と同時に摂取すると効果が弱まる恐れがありますので、少なくとも2時間は時間を空けてください。
また、ミノロックスは、食道や胃の粘膜を刺激しやすい性質があるため、服用時には必ずコップ1杯の十分な水で飲むようにしてください。

服用頻度

ミノロックス50mgは、12時間または24時間ごとに服用してください

副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には服用を中止するなどの対応をとってください。

(※)は、長期投与における発現です。

ミノロックス50mgの重大な副作用

ショック、アナフィラキシー

不快感、口内の違和感、喘鳴、めまい、急な便意、耳鳴り、発汗、潮紅、息苦しさ、血管浮腫、意識障害などが現れた場合は、直ちに服用を中止し、適切な対応を行ってください。

ループス様症候群

特に6ヵ月以上の長期服用した場合に多く報告されています。
発熱、だるさ(倦怠感)、関節の痛み、発疹、日光に対する過敏な反応(光線過敏)、口の中のただれ(口内潰瘍)、脱毛などの症状がみられることがあります。

結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎

発熱、強いだるさ、体重減少、筋肉痛、網状皮斑、しびれなどがあれば速やかに医師へ相談をしてください。
特に6ヵ月以上の連用で注意が必要です。

自己免疫性肝炎

長期の服用で、抗核抗体陽性となる恐れもあります。
黄疸、倦怠感、関節痛、肝腫大、クモ状血管腫などの症状に注意してください。

中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)、多形紅斑、剥脱性皮膚炎

発熱、紅斑、かゆみ、目の充血、口内炎などがあらわれたら服用を中止し、速やかに医師に相談をしてください。

薬剤性過敏症症候群

発疹や発熱に加えて、リンパ節の腫れ、肝機能の異常(肝障害)、血液中の好酸球の増加などが見られることがあります。
また、一部の症例では、HHV-6(ヒトヘルペスウイルス6)の再活性化が確認されており、症状を再燃あるいは遷延化させることがあります。
このような症状が現れた場合は、すぐに薬剤の使用を中止し、医師に相談することが必要です。

血液障害

汎血球減少、無顆粒球症、白血球減少、血小板減少、貧血などあらわれることがあります。
血液検査による定期的な監視が望ましいです。

重篤な肝機能障害

重い肝障害(肝不全など)が起こることがあり、特に服用を始めてから最初の1週間以内に発症するケースが報告されています。
初期症状としては、強いだるさ(倦怠感)、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)、食欲がわかない(食欲不振)などがみられることがあります。
これらの症状に気づいた場合は、すぐに服用を中止し、医師の診察を受けてください。

急性腎障害、間質性腎炎

むくみ、尿量減少などが見られる場合は医師に相談をしてください。
定期的な血液・尿検査で腎機能を確認することが重要です。

呼吸困難、間質性肺炎、PIE症候群

発熱、せき、息切れなどの症状が出た場合は速やかに医師に相談してください。
レントゲン等で診断し、必要に応じて薬剤中止とステロイド治療を行います。

膵炎

みぞおちの激しい痛み、吐き気、前かがみで軽快する特徴的な腹痛が見られたら、速やかに医療機関へ受診してください。

精神神経障害

けいれんや意識がぼんやりする状態(意識混濁・もうろう状態)などの症状が見られることがあります。

出血性腸炎、偽膜性大腸炎

強い腹痛、下痢、血便が続く場合は、服用を中止し速やかに医師に相談してください。

禁忌

使用注意

併用注意

以下の薬剤と併用する際は、ご注意ください。

カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ランタン、鉄剤

ミノロックス(ミノサイクリン)の吸収が低下し、効果が減弱されるおそれがあります。
服用間隔を2〜4時間空けてください。

抗凝血剤(ワルファリンカリウムなど)

血漿プロトロンビン活性を抑制することがあります。

スルホニル尿素系血糖降下薬(グリクロピラミド、グリベンクラミド、グリメピリドなど)

血糖降下作用が増強することがあります。

メトトレキサート

作用が増強されることがあります。

ポルフィマーナトリウム

光線過敏症を起こすおそれがあるため、直射日光や強い光を避けてください。

ジゴキシン

作用が増強し、中毒症状が現れる可能性があります。
併用時は中毒症状に注意してください。

黄体・卵胞ホルモン配合剤(経口避妊薬)

効果の減弱や不正性器出血の発現率が増加するおそれがあります。

外用剤を除くビタミンA製剤・レチノイド製剤(ビタミンA、レチノールパルミチン酸エステル、エトレチナート、トレチノインなど)

頭蓋内圧上昇があらわれることがあります。

保管方法

高温、多湿、直射日光を避けてください

医薬品は、光や温度、湿度など外的要因によって効能が落ちる可能性があります。
特に指示がない場合は、直射日光や高温を避けて、室温(1～30℃)で保管してください。

冷所での保存は避けてください

特に冷所保存の指示がない場合、冷蔵庫で保管する必要はありません。

子どもの手の届かないところに保管してください

子どもの誤飲を防ぐため、手の届かない高いところなどに保管してください。
また、子どもの目を引く様なお菓子の缶などで保管しないよう注意してください。

期限の切れた薬剤は使用を控えてください

医薬品の使用期限は必ず守ってください。
使用期限が過ぎた医薬品は、効果が落ちてしまったり、思わぬ副作用が発生する場合があります。
服用前に使用期限を確認してからご使用ください。

容器の入れ替えはお控えください

それぞれの医薬品に応じて包装に工夫がされていますので、シートから出したり、別の容器に移し替えて保管しないでください。
中身や使用方法がわからなくなってしまう場合があります。
誤用を防ぐためにも、元の容器のままご使用ください。

医薬品以外のものと一緒に保管しないでください

食品などと一緒に保管すると、誤用してしまう恐れがあります。

余った医薬品は、適切に処分してください

飲み残したものや期限が切れた医薬品は、処分してください。
処分方法に不安がある場合は、薬剤師に相談してください。

参考サイト

当商品ページは、これらのサイトを参考として制作しております。
医療用医薬品 ： ミノマイシンカプセル - KEGG
医療用医薬品 ： ミノマイシン錠 - KEGG
炎症時におけるミクログリアのダイナミクス - 富士フイルム和光純薬株式会社