「心筋はどのようなメカニズムで収縮しているの?」
「Naチャネル遮断薬の種類と用いられている疾患は?」
このような疑問を持っている人は少なくないのではないでしょうか。
本記事では、心筋が収縮するメカニズムについて細胞レベルのミクロな視点から徹底解説。
Naチャネル遮断薬の種類や、用いられている不整脈についても詳しく紹介します。
本記事を読めば、Naチャネル遮断薬や不整脈について理解を深められます。
興味がある人はぜひ最後までご覧ください。
静止膜電位と活動電位
心臓を動かす筋肉(心筋)について理解するためには、心筋を構成する細胞について知る必要があります。
そのために、前提となるいくつかの知識を見ていきましょう。
心筋をはじめとして、ヒトの生体を構成している細胞は「細胞膜」という膜で覆われています。
細胞膜の外側と内側には電位差(電圧とほぼ同義)があり、これが「膜電位」です。
膜電位は、外側を基準とした内側の電位で表現されます。
興奮していない状態(刺激がない状態)の膜電位が「静止膜電位」、興奮時の電位変化が「活動電位」です。
静止膜電位は-に維持されており(約-90mV)、興奮時には膜電位が上昇します。
また、膜電位が上昇することを「脱分極」、低下することを「再分極」と言います。
心筋が収縮するメカニズム
心臓を動かすためには、心筋が収縮する必要があります。
また、収縮した後は速やかに弛緩(拡張)しなければなりません。
そのメカニズムについて、心筋を構成する細胞(固有心筋細胞)のレベルで見ていきましょう。
固有心筋細胞は、活動電位が発生することによって収縮します。
活動電位が発生する過程は、0相~第4相に分けられます。
それぞれの相性について解説していきます。
0相
0相は、「急速脱分極」とも呼ばれている相です。
細胞膜上の「ナトリウムイオンチャネル」という通路が開き、ナトリウムイオンが急速に細胞内に流入します。
その結果、活動電位が発生して固有心筋細胞は脱分極を果たします。
第1相
第1相は、「早期急速再分極」とも呼ばれている相です。
ナトリウムイオンチャネルが閉鎖されるとともに、一過性にカリウムイオンが細胞外へ流出します。
その結果、固有心筋細胞はわずかに再分極します。
第2相
第2相は、「プラトー」とも呼ばれている相です。
細胞膜上にある「カルシウムイオンチャネル」が開き、カルシウムイオンが細胞内に流入します。
また、第2相の後半からは、同じく細胞膜上にある「遅延整流性カリウムイオンチャネル」が開き始め、カリウムイオンが細胞外へ流出します。
その結果、イオンの移動が打ち消しあって、固有心筋細胞の膜電位は一定の値で維持されるのです。
第3相
第3相は、「最終急速再分極」とも呼ばれている相です。
第2相で開いたカルシウムイオンチャネルが閉じるとともに、遅延整流性カリウムイオンチャネルがより開いていきます。
その結果、カリウムが細胞外へと流出していき、固有心筋細胞の再分極が進みます。
第4相
第4相は、「静止期」とも呼ばれている相です。
細胞膜上の「内向き整流性カリウムイオンチャネル」が開き、カリウムイオンが細胞外へ流出します。
(※チャネル名は「内向き」だが、カリウムイオンの実際の流れは外向き)
その結果、固有心筋細胞の膜電位が元通りとなります。
心臓の構造と機能
ここまではミクロな視点から、心臓が動くメカニズムについて見てきました。
ここからは、心臓の構造と機能についてマクロな視点で見ていきましょう。
心臓の構造
心臓は握り拳大の管腔臓器であり、重量は成人で約250~300gです。
右房・右室・左房・左室という4つの部屋に分かれており、右房の下流にある右室からは肺動脈が、左房の下流にある左室からは大動脈が出ています。
また、心房(右房・左房)と心室(右室・左室)との間や心室と動脈との間には「弁」という構造があり、血液の逆流を防ぐ働きをしています。
血液の流れは以下の通りです。
- 血液の流れ
- 全身→右房→(三尖弁)→右室→(肺動脈弁)→肺動脈→肺(酸素と二酸化炭素の交換)→肺静脈→左房→(僧帽弁)→左室→(大動脈弁)→大動脈→全身
心臓の機能
右房の近くには「洞結節」という場所があり、心臓の興奮の起点となるのが洞結節です。
なお、興奮を生み出す能力を「自動能」と言います。
洞結節で発生した興奮は「刺激伝導系」という経路を通って、心房や心室を構成している心筋に伝わります。
刺激を受けた心筋により、心房や心室がリズムよく収縮するのが正常な心臓の動きです。
このような流れで興奮が全体に伝わっている状態を、「洞調律」と言います。
不整脈とは?
不整脈とは、洞調律が妨げられている状態です。
代表的な状態と疾患として、以下が挙げられます。
| 状態 | 疾患 | |
|---|---|---|
| 正常自動能の亢進 | 洞結節が過剰に興奮する | 洞頻脈 |
| 正常自動能の低下 | 洞結節の興奮が減少する | 洞不全症候群 |
| 異常自動能 | 刺激伝導系が洞結節より高い頻度で自ら興奮する、もしくは刺激伝導系以外の細胞が自動能を持ち自ら興奮する | ・促進心室固有調律 ・心房期外収縮 ・心室期外収縮 ・非リエントリー性の心房頻拍 |
| 伝導ブロック | 刺激伝導系が興奮を一部しか伝えない、もしくは全く伝えない | ・房室ブロック ・脚ブロック |
| リエントリー | 心筋組織内に異常な電気回路(リエントリー回路)が形成され、興奮が旋回し続ける | ・心房粗動 ・心房細動 ・リエントリー性の発作性上室頻拍(房室結節リエントリー頻拍、房室回帰性頻拍、リエントリー性心房頻拍) ・心室頻拍 ・心室細動 |
抗不整脈薬の種類
不整脈は、心拍数が100回/分を超える頻脈性不整脈と、50回未満となる徐脈性不整脈に大別されます。
このうち、頻脈性不整脈に対して用いられている薬物の総称が、抗不整脈薬です。
抗不整脈薬は、作用するメカニズムから以下のように分類されます。
| Naチャネル遮断薬(Ⅰ群) | ・プロカインアミド ・ジソピラミド ・キニジン ・シベンゾリン ・ピルメノール ・リドカイン ・メキシレチン ・アプリンジン ・プロパフェノン ・フレカイニド ・ピルシカイニド |
|---|---|
| β遮断薬(Ⅱ群) | プロプラノロールなど |
| Kチャネル遮断薬(Ⅲ群) | ソタロールやアミオダロン、ニフェカラントなど |
| Ca拮抗薬(Ⅳ群) (Caチャネル遮断薬) | ベプリジルやベラパミル、ジルチアゼムなど |
| アデノシン三リン酸 | ATP |
| ジギタリス製剤 | ジゴキシン |
これらの抗不整脈薬は、それぞれ活動電位が発生する過程に作用することで、効果を発揮しています。
ここからは、Naチャネル遮断薬について詳しく見ていきましょう。
Naチャネル遮断薬の作用機序
Naチャネル遮断薬はその名の通り、ナトリウムイオンチャネルを遮断する作用があります。
そのため、0相におけるナトリウムイオンの急速な流入が抑制されます。
その結果、活動電位の立ち上がりが抑えられ、興奮の伝導速度が低下するのです。
以上のメカニズムで、Naチャネル遮断薬は抗不整脈作用を発揮しています。
Naチャネル遮断薬の分類
Naチャネル遮断薬は、カリウムイオンチャネルの遮断作用の度合いから、さらに3つに分類されます。
| 分類 | カリウムイオンチャネルの遮断作用 | 活動電位持続時間(APD) | 該当する薬剤 | 主な適応 |
|---|---|---|---|---|
| Ⅰa群 | 強く抑制する | 延長 | ・プロカインアミド ・ジソピラミド ・キニジン ・シベンゾリン ・ピルメノール | 発作性心房細動や期外収縮、発作性上室頻拍など |
| Ⅰb群 | 抑制しない | 短縮 | リドカインやメキシレチン、アプリンジンなど | 心室頻拍や心室期外収縮など |
| Ⅰc群 | わずかに抑制する | 変化なし | プロパフェノンやフレカイニド、ピルシカイニドなど | 発作性心房細動や発作性上室頻拍、心房頻拍など |
以上のうち、抗不整脈作用の強さはⅠc群>Ⅰa群>Ⅰb群です。
Ⅰa群とⅠc群では、特に副作用としての不整脈に注意しなければなりません。
いずれの薬剤も器質的心疾患を有する場合には使用を控える必要があります。
また、心不全患者では使用してはいけません。
Naチャネル遮断薬を用いる主な不整脈
Naチャネル遮断薬を用いる主な不整脈として、以下を紹介します。
- 発作性心房細動
- 発作性上室頻拍
- 心室頻拍
それぞれについて見ていきましょう。
①発作性心房細動
発作性心房細動とは、発作性に心房で無秩序な興奮が起こり、不規則かつ速い心拍を呈する不整脈です。
持続時間は1週間以内で自然に洞調律へ戻りますが、動悸や息切れ、めまい、胸部不快感などの症状がみられます。
発作性心房細動において注意すべきであるのが、血の塊である血栓を形成しやすい点です。
血栓が脳の血管を詰まらせてしまうと、心原性脳塞栓症を発症して脳の広範囲を傷害する恐れがあります。
②発作性上室頻拍
発作性上室頻拍とは、心房や房室接合部(心房と心室の接合部)に起因する異常な興奮により起こる不整脈です。
突然発症して、心拍数は150~250回/分に達することがあります。
動悸や息切れ、胸部不快感が主な症状であり、めまいや失神を伴う場合もあります。
③心室頻拍
心室頻拍とは、心室内で異常な興奮が発生し速い心拍が持続する不整脈です。
持続すると心臓から全身に送られる血液量が減少し、低血圧や意識障害などを引き起こします。
致命的な不整脈である心室細動に移行したり、無脈性(心拍がない状態)となったりする恐れもあるため、緊急に治療を行う必要があります。
まとめ:Naチャネル遮断薬で不整脈を治療しよう
心筋の収縮と弛緩は、複数のイオンが関わって行われています。
Naチャネル遮断薬は、ナトリウムイオンの流入を抑制することで、抗不整脈作用を発揮している薬剤です。
Naチャネル遮断薬はさらに、Ⅰa群・Ⅰb群・Ⅰc群の3種類に分類されます。
発作性心房細動や発作性上室頻拍、心室頻拍といった頻脈性不整脈を、Naチャネル遮断薬で治療しましょう。
