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チロシンキナーゼ阻害薬とは|世代ごとの種類と作用・副作用・適応疾患

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チロシンキナーゼ阻害薬とは|世代ごとの種類と作用・副作用・適応疾患

チロシンキナーゼ阻害薬は、特定の異常な分子を狙って作用する分子標的薬の一種であり、がんや血液の病気などの治療に用いられています。

従来の抗がん剤と異なり、正常な細胞への影響をできるだけ抑えながら、病気の原因となる分子の働きを止めることができるのがチロシンキナーゼ阻害薬の特徴です。 このような特徴を持つチロシンキナーゼ阻害薬は治療効果が高い一方で、特有の副作用や薬ごとの適応疾患の違いがあります。

今回はチロシンキナーゼ阻害薬の基本的な仕組みから種類ごとの特徴、どのような病気に使われるのか、副作用や治療を続けやすくするための工夫まで解説します。 治療を受けるうえでの不安や疑問を減らし、納得して治療に臨めるよう疑問点をクリアにしていきましょう。

チロシンキナーゼ阻害薬とはどんな薬か

チロシンキナーゼ阻害薬は、細胞の増殖や活動に関わる酵素であるチロシンキナーゼの異常な働きを抑える薬です。 特定の分子を狙い撃ちする分子標的薬の一種で、成分ごとに様々ながんの治療に用いられています。

ここではまず、がん細胞の増殖に関わるチロシンキナーゼの働きと、チロシンキナーゼ阻害薬が持つ基本的な特徴について解説します。

チロシンキナーゼとは

チロシンキナーゼは細胞の中に存在する酵素の一種で、細胞が分裂して増える時や、外からの刺激に応じて働きを変える時に重要な役割を担っています。 チロシンキナーゼ活性を持つ上皮成長因子受容体が外部刺激を受けると、内部のチロシンキナーゼが活性化し、化学反応を起こして細胞に情報伝達信号を送ります。

健康な状態では、細胞に送る「分裂せよ」「休め」といった指令のスイッチは必要な時だけオンとなり、不要になれば自然とオフになります。 しかし、がんや一部の免疫・炎症性疾患では、遺伝子変異などによりスイッチが壊れ、信号が止まらない状態になり、細胞が制御不能に増え続けて病気を進行させます。

このようなチロシンキナーゼによる細胞増殖を阻害してがん細胞の増殖機能を低下させるのが、チロシンキナーゼ阻害薬です。

チロシンキナーゼ阻害薬の特徴

チロシンキナーゼ阻害薬はチロシンキナーゼを狙い撃ちして、がん細胞の増殖を止める薬です。 チロシンキナーゼを働かせるスイッチの部分に結合し、酵素が働かないようにすると病気の原因となる細胞は増殖できず、生存も難しくなります。

従来の抗がん剤はがん細胞とともに正常な細胞にもダメージを与えるため、脱毛や強い吐き気などの副作用が出やすい傾向がありました。 しかしながら、チロシンキナーゼ阻害薬は特定の異常分子を狙い撃ちするため、比較的高い効果が得られるのにも関わらず、正常な細胞への影響は比較的少ないという特徴があります。

ただし、副作用がまったくないわけではなく、正常な細胞に存在しているチロシンキナーゼにも作用した場合には、皮膚、消化器、心臓などに副作用が現れることもあります。

チロシンキナーゼ阻害薬は新しい世代の薬も次々と登場しており、従来薬では効きにくかったタイプの病気や、耐性が出た患者さんにも対応できるような研究が進んでいます。 そのため、同じチロシンキナーゼ阻害薬に分類されていても薬ごとに作用する分子が異なり、適応となる病気も違います。

チロシンキナーゼの適応疾患

チロシンキナーゼ阻害薬は主にがんや血液の病気の治療に使われますが、薬によって作用する分子や場所が異なるため、適応となる病気もそれぞれ異なるのが特徴です。 ここでは、チロシンキナーゼ阻害薬の主な適応疾患について紹介します。

慢性骨髄性白血病・急性リンパ性白血病

白血病は、血液をつくる骨髄の中で白血球が異常に増えてしまう血液のがんです。 その中でも、慢性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病と呼ばれるタイプの一部は、BCR-ABLという特別なたんぱく質の異常な作用によって細胞が増えすぎてしまう病気であり、このBCR-ABLが細胞を増やすスイッチがオンになり続けるために起こります。

チロシンキナーゼ阻害薬はこのBCR-ABLのスイッチをオフにして、白血病の進行を抑える薬です。 様々な種類のチロシンキナーゼ阻害薬が開発されたことにより、以前よりも10年生存率が高まり、慢性骨髄性白血病はコントロール可能になってきたともいわれています。

肺がん・消化管間質腫瘍などの固形がん

固形がんとは、血液のがん以外の臓器や組織にしこりや塊などできるがんのことで、耳にすることの多い肺がんや胃がん、乳がん、大腸がんなども固形がんに含まれます。

例えば、日本人に多い非小細胞肺がんの細胞の表面には上皮成長因子受容体が多くあり、チロシンキナーゼが作用してがん細胞を過剰に増殖させる指令を送り続けるため、病気が進行します。 このような指令を止めるためにチロシンキナーゼ阻害薬を使用して、がん細胞の増殖を抑えます。

これらのことからもわかるように、肺がんの治療薬の中でもチロシンキナーゼ阻害薬は、上皮成長因子受容体に遺伝子変異を起こしている事例において効果の高い薬剤とされています。 そのため、肺がんの治療法を選択する際には、上皮成長因子受容体の遺伝子変異検査が行われ、陽性の場合にはチロシンキナーゼ阻害薬を使用することが推奨されています。

また、消化管間質腫瘍というお腹の中にできる珍しいがんでも、同じような原理で薬が使われています。 KITというたんぱく質が関係しているこのがんでは、チロシンキナーゼ阻害薬を使用し、術後の再発を防いだり、手術ができない状態でも病気の進行を遅らせたりする治療を行います。

関節リウマチ・肺線維症などのがん以外の病気

実はチロシンキナーゼ阻害薬はがんだけでなく、免疫の異常や炎症が関係する病気にも使われるようになってきています。

関節リウマチは免疫が自分の身体を攻撃して関節に炎症を起こし、腫れや痛みが続く病気ですが、この炎症にもチロシンキナーゼが関係していることがわかっており、その働きを止めることで症状の改善が期待できます。

また、特発性肺線維症は肺の組織が徐々に硬くなり、息がしづらくなっていく病気です。 この病気でも、進行を遅らせるためにチロシンキナーゼの一部をブロックする薬が使われることがあります。

チロシンキナーゼ阻害薬の副作用

チロシンキナーゼ阻害薬はがん細胞や異常な細胞を狙って作用する分子標的薬と呼ばれるタイプの薬であるため、従来の抗がん剤に比べると副作用が出にくいとされていますが、まったく副作用がないわけではありません。

ここでは、治療中に注意しておきたい副作用や、その対策について解説します。

チロシンキナーゼ阻害薬の主な副作用

チロシンキナーゼ阻害薬は、薬の種類や体質によって副作用のあらわれ方に違いがありますが、比較的多くの方に見られるのが、皮膚や消化器、むくみや倦怠感といった症状です。

皮膚への影響としてはにきびのような発疹、乾燥、かゆみなどがあり、見た目の変化に不安を感じる方もいますが、早めに保湿をしたり、皮膚科で治療を受けたりすることで軽く済むケースがほとんどです。

また、下痢や吐き気といった消化器症状もよくある副作用で、薬が胃腸に作用して吸収や動きに変化を与えるために起こります。 これら消化器症状は。食事の工夫や整腸剤の使用で改善することも多いので、無理に我慢せず医師に相談することが大切です。

他にも手足のむくみ、だるさ、関節のこわばり、筋肉の張りなども報告されています。 こうした症状は一時的なこともありますが、日常生活に支障が出る前に対策を取ることが重要です。

重篤な副作用と注意したい症状

まれにですが、命にかかわるような重い副作用が起こることがあります。 例えば、間質性肺疾患は息苦しさや咳が続く時に疑われる病気で、早期発見がとても重要となる肺疾患です。 そのため、急に息が切れたり、発熱したりする場合には、医療機関をすぐに受診する必要があります。

また、骨髄抑制が原因で血液の成分が変化し、貧血や感染症を起こしやすくなる場合もあります。 定期的な血液検査で早めに変化を確認するのに加えて、チロシンキナーゼ阻害薬を服用中は日頃から基本的な感染症を行うことを心掛けましょう。

さらに心臓や肝臓に影響を与えるタイプの薬もあり、不整脈や肝機能の異常が出ることも報告されています。 これらも心電図などの定期検査を受けながら、今後の治療方針を検討していきます。

副作用が出やすい時期と長期服用時の注意

副作用は服用開始後すぐの段階で出やすいものもあれば、数週間?数ヵ月経過してから出てくるものもあります。 皮膚や胃腸の症状は初期に出やすく、慣れてくると軽くなることも多い一方で、肝機能や血圧の変化などは徐々にあらわれるため、定期的な検査が欠かせません。

また、チロシンキナーゼ阻害薬を長期服用する場合には、身体への負担が大きくなることが予想されるので、気になる症状があらわれた時には症状が軽いうちに医師へ相談することが大切です。

チロシンキナーゼ阻害薬の世代と特徴

チロシンキナーゼ阻害薬には様々な種類があり、作用するたんぱく質や適応となる病気がそれぞれ異なります。 開発された順に第1世代、第2世代、第3世代と、それらに分類できないその他の薬に分類されています。

第1世代:イマチニブなど

イマチニブを主成分とするグリベックは、スイスのノバルティスファーマ社が1992年に開発し、2001年に日本で承認されたチロシンキナーゼ阻害薬です。 イマチニブが登場したことにより、これまで治療が難しかった慢性骨髄性白血病や消化管間質腫瘍をはじめとするがんの治療の大きな転機となりました。

イマチニブは毎日飲む内服薬で、長く飲み続けることが基本となりますが、飲み始めの頃に骨髄抑制や発疹、むくみ、吐き気、下痢などの副作用があらわれる恐れがあります。 一方で、通常の抗がん剤で多く見られる脱毛は約0.9%と、比較的頻度は低くなっています。

第2世代:ダサチニブ・ニロチニブなど

第1世代よりも効果を高めたり、副作用を減らしたりする目的で開発されたのが第2世代のダサチニブやニロチニブといったチロシンキナーゼ阻害薬です。

慢性骨髄性白血病や再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に適応があり、イマチニブが効きにくくなった場合や、最初からより強力な薬を使いたい時に選択されます。 ただし、ダサチニブやニロチニブは、イマチニブのように消化管間質腫瘍には適応がない点には注意が必要です。

また、ニロチニブを主成分とするタシグナは、空腹時に服用する必要があるなど飲み方に少し注意が必要ですが、イマチニブに抵抗を持つ慢性骨髄性白血病などにも腫瘍効果が期待できるとされています。

ダサチニブは骨髄抑制やむくみ、肺に水が溜まる胸水といった副作用が起きやすく、ニロチニブは骨髄抑制と脱毛、皮膚疾患の副作用が起きやすいとされています。 副作用の重症化を防ぐためにも、レントゲンや心電図などの検査を定期的に受けることが大切といえるでしょう。

第3世代:ポナチニブなど

第3世代のチロシンキナーゼ阻害薬は、すでに第1・第2世代の薬が効かなくなった場合や、特別な遺伝子変異がある場合に使われることが多いです。

ポナチニブはT315Iという強い耐性を持った変異にも対応できる薬で、慢性骨髄性白血病やフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の一部で使われます。

非常に強力な薬ですが、血圧の上昇や心筋梗塞、狭心症といった副作用が出ることがあり、特に高血圧や糖尿病、脂質異常症などを患っている方はリスクが高いため、慎重に経過を見ながら使用されます。

その他:ゲフィチニブ、エルロチニブ、クリゾチニブなど

ここまで紹介してきた薬以外にも、ゲフィチニブやエルロチニブ、クリゾチニブといったチロシンキナーゼ阻害薬に分類される薬剤があります。

ゲフィチニブやエルロチニブは上皮成長因子受容体というたんぱく質に異常がある肺がんに使われる内服薬で、腫瘍の縮小が期待できる一方、皮膚のかゆみや下痢などの副作用が出ることがあります。 クリゾチニブは未分化リンパ腫キナーゼという遺伝子が異常を起こすことで生じる肺がんの治療に使用される一方で、視覚の違和感やむくみなどの副作用が報告されています。

最近ではこれらの薬に加えて、より長く効くなど改良された新しい世代の薬も増えてきています。 自分の病気に効果的な薬を選ぶために、遺伝子検査などでタイプを調べることも、近年の治療において一般的になっています。

チロシンキナーゼ阻害薬による治療における工夫やサポート

チロシンキナーゼ阻害薬の効果を発揮するためには、毎日決められたとおりに飲み続けることがとても大切です。 しかしながら、薬による体調の変化や気持ちの不安定さ、生活のペースとのズレなど、治療を続けていく中で様々な障害があらわれることが考えられます。

ここでは、日々の負担を減らしながら、薬をきちんと続けるための工夫や、安心して治療を続けるための困った時に頼れるサポートについてご紹介します。

薬の飲み忘れを防ぐ小さな工夫

長期間服用を続けるなかで、つい忘れてしまったり、うっかりタイミングを逃してしまったりすることもあるかもしれません。 これを防ぐためにも、自分なりの服薬ルールを決めておくのがおすすめです。

例えば、朝食のあとに決まった飲み物と一緒に薬を用意しておく、スマホのアラームや服薬管理アプリを使う、カレンダーにチェックをつける、薬を入れるケースを曜日ごとに分けておくといった工夫があります。

もし、副作用が心配で飲むのをためらってしまう時は、自己判断で勝手に中止するのではなく、早めに医師に相談しましょう。

サポートを受けながら安心して治療を続ける

治療中は医師だけでなく、薬剤師や看護師、栄養士など、様々な専門スタッフのサポートが受けられ、副作用の相談や薬の飲み方、食事との相性、気持ちの不安などを相談することができます。

例えば、皮膚の副作用が気になる場合は皮膚科の医師につないでもらうことや、栄養面で困っている時は食事のアドバイスをもらえることもあります。 さらに病院によっては、がん相談支援センターや患者支援室など、専用の相談窓口が設けられているので、困った時には利用するとよいでしょう。

不安や疑問をためこまずに伝える

治療が長期化すると気持ちが疲れてきたり、つい無理をしてしまったりすることもありますが、治療を継続するためには不安や不満を溜め込まないことが大切です。 体調の変化や疑問に関してはどんな小さなことでも、遠慮なく医師や医療スタッフに伝え、心と身体の負担を軽くしていきましょう。

医療機関に相談しにくいことであれば、同じ病気を経験した患者さんの声を聞いたり、患者会に参加したりするのも1つの手段です。 治療期間を少しでも快適に過ごせるよう、小さな工夫を積み重ねていきましょう。

チロシンキナーゼ阻害薬は病気の原因を狙って治療できる有力な選択肢

チロシンキナーゼ阻害薬はがんや血液の病気、免疫異常に関わる疾患に対して、異常なたんぱく質の働きを直接抑える薬であり、標的を絞って作用することで従来の抗がん剤よりも副作用を抑えながら治療できるのが特徴です。 薬ごとに作用する分子や使われる病気が異なるため、遺伝子検査などで適応を見極めて薬を選択していきます。

ただし、他の抗がん剤よりも副作用はおだやかとされているものの、チロシンキナーゼ阻害薬特有の副作用が見られるため注意が必要です。 副作用や服薬管理を工夫し、医療チームと連携しながら、自分に合った治療を無理なく継続していきましょう。

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