薬剤には1つの有効成分だけを配合した単剤と、複数の有効成分が配合した複合剤の2種類があります。
複合剤は服用する薬剤の数を減らしたり、単剤よりも効果の高い薬剤を製造できるメリットがある一方で、副作用の原因が分かりにくかったり、薬剤の量を調整しにくかったりするデメリットもあります。
今回は胃薬の中でも胃酸による胃炎に効果を示す複合制酸薬の効果や副作用を解説していきます。
さらに胃に優しい生活を送るためのポイントについてもまとめましたので、複合制酸薬の服用と併せて行ってみてください。
複合制酸薬とは
制酸薬とは胃酸の酸を中和し、胃酸によって胃や十二指腸などの消化管の粘膜が傷つくのを防ぐ作用がある薬剤です。
制酸薬は胃酸が原因で起きる胃炎や十二指腸潰瘍による重苦しさや痛みなどに効果を示す一方で、胃酸が原因でない症状にはあまり効果がないのが特徴です。
この制酸薬の成分に加えて、胃粘膜保護や便通改善などの作用がある有効成分を配合した薬剤が複合制酸薬です。
例えば、マルファ懸濁用配合顆粒という薬剤には、胃酸を中和する制酸作用を持つ水酸化アルミニウムゲルと、便通を改善する水酸化マグネシウムシロップの2つの有効成分が配合されています。
複合制酸薬の種類とは
複合制酸薬には、水酸化アルミニウムゲル・水酸化マグネシウムシロップの2種類が配合された複合剤や、ジサイクロミン塩酸塩・水酸化アルミニウムゲル・酸化マグネシウム顆粒の3種類が配合された複合剤などがあります。
過去にはプロパンテリン臭化物・クロロフィル配合剤が配合されたメサフィリンや、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム・甘草抽出物が配合されたネオユモールなどの複合制酸薬もありましたが、これらは販売中止となりました。
水酸化アルミニウムゲル・水酸化マグネシウムシロップ配合剤
医療機関で処方される一般的な複合制酸薬として、水酸化アルミニウムゲルと水酸化マグネシウムシロップの2種類が配合された、ディクアノン懸濁用配合顆粒、マーレッジ懸濁用配合DS、マルファ懸濁用配合顆粒、リタロクス懸濁用配合顆粒といった商品があります。
なお、過去にはマーロックス懸濁用配合顆粒も販売されていましたが、現在は販売中止となりました。
これらの複合制酸薬は、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の症状改善などの幅広い消化器症状に効果があり、即効性も高いのが特徴です。
薬剤はそのまま経口投与するか、薬剤1gに対して10mlの水に懸濁して服用することが可能ですが、水に溶かして飲む方が効果が期待できるとも言われています。
1日に3~4回服用するのが一般的で、胃粘膜に作用させるために食前などの空腹時や就寝前に服用するケースが多いです。
副作用には食欲不振や吐き気、便秘、下痢などの消化器症状の他、リン酸塩低下や高マグネシウム血症、アルミニウム脳症などを引き起こす恐れがあります。
特に腎障害を抱えている方や高齢者はアルミニウムが身体から排出されにくいので、定期的に検査を受けながら服用してください。
これに加えて妊婦は相対禁止、授乳婦や小児までの子どもも注意して服用する必要があります。
制酸薬は胃粘膜を保護する作用があることから、併用薬の吸収を妨げて効果を弱める恐れがあるとされています。
そのため、効果が弱まる恐れのあるテトラサイクリン系抗生物質やニーキノロン系抗生物質、貧血改善の鉄剤、強心薬のジギタリス製剤などは、制酸薬の服用前後2時間あけて飲むようにするとよいでしょう。
また、カルシウムを多く含む牛乳などを大量に飲むとミルクアルカリ症候群を引き起こす可能性があるので、制酸薬の服用時は控えてください。
ジサイクロミン塩酸塩・水酸化アルミニウムゲル・酸化マグネシウム顆粒配合剤
胃腸の痙攣による痛みを抑えるジサイクロミン塩酸塩、胃酸を中和する持続性の制酸薬の水酸化アルミニウムゲル、速効性の高い制酸薬の酸化マグネシウムの3種類の成分が配合された複合制酸薬がレスポリックス配合顆粒です。
古くから使われている複合制酸薬で、抗コリン作用によって消化管の過剰な運動を抑え、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の痛みを改善します。
1回1~2gを1日3~4回経口投与するのが基本で、空腹の食前や就寝前に服用を指示されることが多いですが、症状によっては食後の服用の場合もあります。
副作用として口渇や便秘、下痢が起こりやすく、めまいや動悸などが見られることもあります。
さらに重篤な副作用としてアルミニウム脳症やアルミニウム骨症、高マグネシウム血症などを引き起こす可能性があるので、服用中は定期的に検査を受けて数値を確認してください。
これらの副作用のリスクから、前立腺肥大による排尿障害や心疾患、麻痺性イレウスを抱えている方、透析療法を受けている方の使用は禁止、潰瘍性大腸炎、下痢、甲状腺機能亢進症、腎障害の方は注意して服用しなければなりません。
さらに眼圧が上昇する恐れがあるため、閉塞隅角緑内障は禁止、開放隅角緑内障の方は注意して服用します。
飲み合わせに関しては他の制酸剤と同様、効果が弱まる恐れのあるテトラサイクリン系抗生物質やニーキノロン系抗生物質、強心薬のジギタリス製剤などは同時服用を避けてください。
一方で、抗コリン作用のある三環系抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、フェノチアジン系薬剤と併用すると副作用のリスクが高まります。
特に抗ヒスタミン薬は市販の風邪薬や鼻炎薬にも配合されている成分なので、注意しましょう。
食べ合わせについても、カルシウムを多く含む牛乳を大量に飲むと、ミルクアルカリ症候群を引き起こす危険性があるので、薬剤の服用中は控えましょう。
複合制酸薬だけに頼らない胃に優しい生活を送るポイントとは
胃酸が原因となる胃炎や十二指腸潰瘍などの病気の時には複合制酸薬が必要となりますが、日頃から胃に過度な負担をかけないような生活を送ることも胃を守るために大切です。
胃酸とは
胃酸は非常に強い酸性の胃液の成分で、胃に入ってきた細菌を殺菌したり、食べ物のタンパク質を消化しやすいように変性したりする役割があります。
普段は胃酸によって胃が傷つかないように胃壁の粘膜に守られていますが、何らかの要因で胃酸過多の状態になると胃粘膜がダメージを受けて、胃もたれや胸やけなどの症状が現れ、進行すると胃炎や胃がんなどの病気になる可能性もあります。
胃酸過多になる原因
胃酸過多になる原因は複数ありますが、主なものとしてアルコール、暴飲暴食、ストレスなどがあげられます。
まずアルコールは胃酸の分泌を促進する作用があり、少量であれば胃の血流を改善して機能を活性化させたり、食欲を増進したりする良い面もありますが、大量の飲酒は胃酸過多となり胃粘膜にダメージを与えます。
さらにアルコール度数の高いお酒や空腹時の飲酒は胃粘膜を痛めるため、胃を守るためには避けるべきと言えるでしょう。
暴飲暴食も胃酸過多の原因の1つです。
食べ物をたくさん食べれば、その分たくさん消化しなければならず、胃の中は胃酸が長時間出続ける状態となります。
特に香辛料が強い料理やカフェインを多く含むもの、脂っこい食べ物は胃酸の分泌を促進させるため、摂り過ぎには注意が必要です。
また、胃の機能は自律神経によって調整されており、ストレスによって自律神経が乱れると胃酸過多になることがあります。
しかも、自律神経の乱れは胃粘液を減少させてしまうため、より胃のトラブルを抱えやすくなります。
胃酸過多を防ぐ生活
胃酸過多にならないためには、日々の生活を整えることが重要です。
まず、直接胃に影響を与える食事を胃に優しいものへ変えていきましょう。
胃酸の分泌を過剰にする揚げ物や脂身の多い肉、スイーツなどは控え、脂肪の少ない肉や白身魚、おかゆなど胃に優しい食品を選び、蒸すや茹でるといった油の少ない調理法にすることで胃への負担を減らせます。
さらによく噛んでゆっくり食べ、腹八分目を心掛けてください。
そして、ストレスを溜めないことも胃を健康に保つ秘訣の1つです。
ほどよい運動や趣味などを生活に取り入れたり、必要に応じて専門家に相談したりすることは心の健康を守るうえでの大切なポイントです。
また、疲労が溜まらないように十分な休息を心掛け、毎日決まった時間に食事・睡眠を取るような規則正しい生活を送りましょう。
それでも不調が続く時には何か病気が隠れている可能性も考えられるので、大丈夫だろうと過信せず、医療機関で検査を受けてください。
胃の検査には、バリウムを飲んでレントゲン撮影をする胃バリウム検査、口や鼻から胃カメラを入れる胃内視鏡検査、採血で胃がんをチェックする胃ABC検診などがありますが、症状や年齢、遺伝のリスクによって適切な検査は異なるため、医師に相談することが大切です。
複合制酸薬とは胃酸中和+αの作用を持つ配合薬
複合剤とは有効成分を複数配合した薬剤のことで、複合制酸薬は制酸薬に加えて他の作用を持つ成分が配合された薬剤です。
複合制酸薬にはマルファ懸濁用配合顆粒のような水酸化アルミニウムゲルと水酸化マグネシウムシロップの2つの有効成分が配合された商品や、ジサイクロミン塩酸塩、水酸化アルミニウムゲル、酸化マグネシウムの3つが配合されたレスポリックス配合顆粒などの商品があります。
これら薬剤は制酸作用にプラスして、マルファ懸濁用配合顆粒は便通改善作用、レスポリックス配合顆粒は胃腸の痙攣による痛みを緩和する作用を持ち合わせています。
しかしながら、複合制酸薬ばかりに頼り続けるのではなく、胃に優しい生活を日々心掛けることも大切です。
胃酸過多になりやすいアルコールや暴飲暴食、ストレスなどに気をつけ、胃に優しい食事や規則正しい生活を送ることを心掛けて、胃に過剰な負担をかけないように配慮していきましょう。