統合失調症の治療薬として開発された抗精神病薬はドパミンに作用する薬剤ですが、様々な種類があり、その系統ごとに作用や特徴は異なります。
今回はベンザミド系抗精神病薬にフォーカスして、効果や副作用といった特徴を解説していきます。
さらにベンザミド系以外の抗精神病薬についても触れていきますので、特徴を比較しながら理解を深めていきましょう。
ベンザミド系抗精神病薬の特徴
ベンザミド系抗精神病薬には、様々な種類がありその特徴は成分ごとに異なります。
ここではベンザミド系抗精神病薬の代表的な薬剤であるスルピリドについて解説していきます。
ベンザミド系抗精神病薬の種類
統合失調症は脳内の神経伝達物質のドパミンのバランスが崩れることで発症し、幻覚や妄想、思考障害が起きる陽性症状と、感情の平板化や意欲の欠如、自閉が起きる陰性症状、記憶力や注意力、判断力が低下する認知機能障害の3つの症状が起こる病気です。
このような症状を改善する目的で使用されるのが抗精神病薬で、定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬の2種類に分類されています。
ベンザミド系抗精神病薬は定型抗精神病薬の薬剤で、主にドパミンD2受容体を阻害して脳内のドパミンの働きを抑制することにより、統合失調症の陽性症状を改善する効果を持っています。
しかしながら、非定型抗精神病薬と比較してドパミン抑制作用が強いために陽性症状に対しては高い効果が期待できる一方で、陰性症状を強めてしまうケースもあるのが特徴と言えます。
この定型抗精神病薬のベンザミド系抗精神病薬には、スルピリド、スルトプリドネモナプリド、チアプリド塩酸塩といった有効成分を配合した商品があります。
これらは同じベンザミド系に分類されていますが、適応は薬剤ごとに異なるのが特徴です。
ベンザミド系抗精神病薬スルピリドの商品
有効成分スルピリドを主成分とするベンザミド系抗精神病薬には、先発医薬品のドグマチール、後発品のスルピリドがあります。
先発医薬品のドグマチールは、錠剤のドグマチール錠50mg・100mg・200mg、注射液のドグマチール筋注50mg・100mg、散剤のドグマチール細粒10%・50%、カプセル剤のドグマチールカプセル50mgといった商品が日医工から、後発品のスルピリドはスルピリド錠50mg・100mg・200mg、スルピリド細粒10%・50%、スルピリドカプセル50mgといった商品が複数の製薬会社から販売されています。
ベンザミド系抗精神病薬スルピリドの効果・適応
スルピリドは、定型抗精神病薬と消化管運動改善薬の2つの顔を持つ珍しい薬剤です。
低用量ではドパミンを活性させてうつ状態を改善する抗うつ薬や、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を治療する胃薬として使用され、高用量ではドパミンの働きを阻害して統合失調症の陽性症状を改善する定型抗精神病薬と用いられます。
そのため、適応となる病気は胃潰瘍、十二指腸潰瘍、統合失調症、うつ状態、うつ病と幅広いのが特徴です。
ベンザミド系抗精神病薬スルピリドの用法用量
治療する病気によって用法用量が異なるスルピリドについて、ここではスルピリド錠を例にあげて解説します。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療であれば、スルピリドに換算して成人1日150mgを3回に分けて服用するのが基本ですが、症状によって適宜増減します。
うつ病やうつ状態では、スルピリドに換算して成人1日150~300mgを分割して服用するのが通常ですが、年齢や症状によっては1日600mgまで増量することが可能です。
そして、統合失調症ではスルピリドに換算して通常1日300~600mgを分割投与しますが、年齢や症状によって1日1200mgまで増量できるとされています。
ベンザミド系抗精神病薬スルピリドの副作用
スルピリドの副作用には睡眠障害、振戦、眠気といった症状の他に、月経異常や乳汁分泌が報告されています。
月経異常や乳汁分泌は、ドパミンによって分泌が抑えられていたプロラクチンというホルモンが増加することで生じ、男性であっても乳房が大きくなったり性機能障害が起きたりすることがあります。
これら症状はベンザミド系抗精神病薬に共通する副作用であり、薬剤を中止することで治っていきますが、回復までは少し時間を要することがあります。
また、重篤な副作用として遅発性ジスキネジアや悪性症候群などを引き起こす恐れがあります。
遅発性ジスキネジアは口や舌の震えが続く症状が現れる副作用で、発症すると治りにくいと言われているため、大量の薬剤を長期間服用している時や症状が出やすい高齢者や女性は特に注意してください。
ベンザミド系抗精神病薬スルピリドの禁忌
スルピリドは、褐色細胞腫、プロラクチン分泌性下垂体腫瘍、プロラクチノーマ、パラガングリオーマの疑いがある方の使用は禁忌で、妊婦は有用性がリスク上回る場合だけ使用を検討できます。
さらに腎臓障害やパーキンソン病、低カリウム血症の方や高齢者、授乳婦、小児までの子どもは副作用に注意して使用しなければなりません。
飲み合わせに関しても、他の抗精神病薬と併用すると副作用が強まるリスクが、反対にパーキンソン病の治療薬と併用するとそれぞれの薬剤の作用が弱体化することがあります。
アルコールも副作用を強める恐れがあるため、服用中はお酒を控えましょう。
ベンザミド系以外の抗精神病薬の種類と特徴
ここまでベンザミド系抗精神病薬のスルピリドを中心に解説してきましたが、抗精神病薬は他にも様々な種類があります。
ここでは統合失調症の治療で使用されることの多い、ロドピンとクロフェクトンを取り上げて紹介していきます。
ロドピンの特徴
ロドピンは有効成分ゾテピンを配合した抗精神病薬で、ロドピン細粒10%・50%やロドピン錠25mg・50mg・100mgといった先発医薬品と、ゾテピン細粒10%・50%、ゾテピン錠25・50・100mgといった後発品があります。
ロドピンはセロトニン・ドーパミン拮抗薬と呼ばれ、抗セロトニン作用と抗ドーパミン作用の2つの作用を持っている抗精神病薬です。
非定型抗精神病薬に分類され、統合失調症の陽性症状と陰性症状の両方に効果があるのが特徴です。
ロドピンの用法用量は、ゾテピンに換算して通常成人は1日75~150mgを分割投与しますが、年齢や症状によって最大1日450mgまで増量することが可能です。
ロドピンは服用後、消化管から吸収され、血中濃度は2時間でピークを迎えて約14時間で半減します。
鎮静効果が強く眠気などの副作用が現れやすいとされ、特に飲み始めの頃に見られる立ちくらみには注意が必要です。
他にも口渇や便秘、排尿障害、体重増加などの副作用も報告されています。
さらにごく稀ではありますが、悪性症候群や重い不整脈、麻痺性イレウス、血栓などの重篤な副作用が現れる可能性もあります。
これら副作用のリスクから、昏睡状態、循環虚脱状態、アドレナリン投与中、中枢神経抑制剤の強い影響を受けている方、頭部や脳に異常がある方は使用禁止です。
また、褐色細胞腫や肝機能障害、血液障害などを始めとする様々疾患で使用注意とされています。
クロフェクトンの特徴
クロフェクトンは有効成分クロカプラミンを配合した抗精神病薬で、クロフェクトン錠10mg・25mg・50mg、クロフェクトン顆粒10%といった商品があり、統合失調症への保険適用が認められているイミノベンジル系の薬剤です。
クロフェクトンの用法用量は、通常成人はクロカプラミンに換算して1日あたり30~150mgを3回に分けて服用しますが、症状や年齢によって適宜増減します。
服用後、約3時間で血中濃度はピークに達し、約46時間で半減したというデータが報告されています。
副作用として多いのは手の震えや身体のつっぱりなどの錐体外路症状ですが、予防薬で症状を抑えることも可能です。
他には口渇や目のかすみ、便秘、パーキンソン症候群などが見られることがあります。
重い副作用として注意したいのが、遅発性ジスキネジアです。
完治しにくい症状なので、長期服用の際は症状が現れていないかを注意深く観察しつつ、もし目や口の動作に異常が見られた時には速やかに医療機関を受診してください。
加えて、悪性症候群や無顆粒球症、血栓症などの重篤な副作用も報告されてるので注意しましょう。
他の抗精神病薬同様、禁忌や注意を要する疾患、飲み合わせに注意が必要な薬剤は多数あります。
昏睡状態や循環虚脱状態、アドレナリン投与中の方、妊婦は使用禁止、肝機能や心臓、血管の疾患がある方、高齢者、授乳婦、小児までの子どもは注意して使用してください。
また、クロフェクトンと併用したい薬剤がある場合には、必ず医師や薬剤師に相談してから服用してください。
ベンザミド系抗精神病薬はドパミン抑制作用が強いのが特徴
ベンザミド系抗精神病薬は定型抗精神病薬で、脳内のドパミンの働きを抑制することにより、統合失調症の陽性症状を改善する効果を持っていますが、非定型抗精神病薬と比較してドパミン抑制作用が強いため、陰性症状を強めてしまうケースもあることが特徴の1つにあげられます。
ベンザミド系抗精神病薬のスルピリドは投薬量によって効果が変化する特徴的を持つ薬剤で、高用量で統合失調症、低用量でうつ病と胃・十二指腸潰瘍の治療に使用されます。
スルピリドの副作用には睡眠障害、振戦、眠気などの症状の他に、月経異常や乳汁分泌が報告されており、男性であっても乳房が大きくなったり性機能障害が起きたりすることがあるため注意が必要です。
このような副作用にお悩みの場合は、ベンザミド系抗精神病薬の他にも様々な種類の抗精神病薬が開発されているので、医師に相談して代替薬を処方してもらうのも1つの手段と言えるでしょう。
