病気の影響や代謝異常により生成されたアンモニアが体内に蓄積する高アンモニア血症は、呼吸障害や意識障害などを引き起こす病気です。
この高アンモニア血症で使用されるのが、ラクツロースをはじめとする高アンモニア血症治療薬です。
今回は高アンモニア血症治療薬ラクツロースを中心に効果や副作用などを解説し、さらに他の高アンモニア血症治療薬にも触れていきます。
高アンモニア血症とは
高アンモニア血症という病気について知ることで、高アンモニア血症治療薬の作用がより理解しやすくなるので、まずは病気の原因や治療法について学んでいきましょう。
高アンモニア血症の症状
高アンモニア血症は体内でアンモニアをうまく分解できずに蓄積されて、脳機能に障害を起こす代謝性脳症を発症することがある病気です。
通常であればアンモニアは肝臓で尿素となって身体の外へ排泄されますが、肝機能の低下により代謝に異常をきたすとアンモニアが代謝されずに体内に溜まって高アンモニア血症となります。
もともとアンモニアは体内で生成される物質ですが、神経毒性を持っている物質のため、アンモニアが脳に溜まると脳機能に障害を起こす代謝性脳症を引き起こします。
高アンモニア血症による代謝性脳症の初期症状は記憶力の低下や集中力の欠如、軽い意識障害、頭痛、吐き気、呼吸困難、痙攣などですが、重症化すると歩行困難や反射の低下、錯乱、ひいては昏睡状態に陥ることがあります。
高アンモニア血症の原因
高アンモニア血症はアンモニアを尿素に変換する尿素サイクルがうまく機能しない尿素サイクルの異常や、尿路に感染するウレアーゼ産生菌がアンモニアを生成することなどが原因となって発症します。
その他に便秘、タンパク質の過剰摂取、薬剤の副作用などが原因となることもあります。
高アンモニア血症の治療法
血中アンモニア濃度や血糖値についての血液検査にて高アンモニア血症と診断された場合は、アンモニアの産生を抑制して排出を促す治療を開始します。
症状が重い場合には、アンモニアを排出するための人工透析や、肝臓の病気が原因となっているのであれば肝臓の移植を行うこともありますが、基本的には高アンモニア血症治療薬と併用して、タンパク質の摂取を減らすことで肝臓の負担を軽減し治療していきます。
高アンモニア血症治療薬ラクツロースとは
高アンモニア血症治療薬の第一選択薬であるラクツロースは人工的に合成された二糖類の内服薬で、先発薬のモニラック原末、モニラック・シロップ65%があり、後発品にはラクツロースシロップやラグノスNF経口ゼリー分包などの商品があります。
ラクツロースの効果
高アンモニア血症治療薬のラクツロースは、腸内で分解されることで有機酸となり、腸内を酸性に傾ける作用があります。
腸内の酸性度が高いほどアンモニアの吸収が低下するため、血中のアンモニアは減少し、脳への移行も抑えられます。
このような作用があることから、ラクツロースは高アンモニア血症の脳波異常や神経障害などの改善に有効となっています。
さらにラクツロースには浸透圧作用によって、緩やかに排便を促す働きもあるため、小児の便秘改善や産婦人科の手術後の排ガス・排便にも用いられます。
ラクツロースの用法用量
ラクツロースのモニラック・シロップ65%を高アンモニア血症の治療に使用する場合は1日30~60mlを3回に分けて、産婦人科の手術後の排ガス・排便に使用する場合は朝夕の2回に分けて服用します。
一方、小児の便秘改善に使用する場合には体重1kgあたり1日0.5~2mlを3回に分けて服用します。
なお、それぞれの量は年齢や症状によって増減します。
ラクツロースの副作用
ラクツロースの副作用には下痢や吐き気、腹痛、食欲不振などがありますが、重篤な副作用の報告はありません。
高アンモニア血症は便を排出することでも体内のアンモニアの減少が期待できるため、軽い軟便程度であれば問題はないとされていますが、重い下痢が続くような時には脱水症状を引き起こす恐れもあるので医師や薬剤師に相談してください。
ラクツロースの禁忌
ラクツロースは合成二糖類のため比較的安全性の高い薬剤とされていますが、糖ガラクトースの代謝に障害を持つガラクトース血症の方の使用は禁忌です。
さらに妊婦の使用は相対禁止、糖尿病の方や高齢者は副作用に注意して使用してください。
また、ボグリボースやαグルコシダーゼ阻害薬と併用すると下痢などの副作用が起こりやすくなるため、飲み合わせに注意する必要があります。
ラクツロース以外の高アンモニア血症に使用する薬
高アンモニア血症治療はラクツロースが第一選択薬ですが、ラクツロース以外にも様々な薬剤が使用されています。
ここではラクツロース以外の高アンモニア血症に使用される薬剤を紹介していきます。
リフキシマ
リフキシマはリファキシミンを主成分とする錠剤の内服薬で、体内でアンモニアを産生する腸内細菌のRNA合成を阻害することで肝性脳症の症状を改善する抗菌薬です。
多くの内服薬は小腸で吸収されてから血中に入ることで効果を示しますが、リフキシマは小腸に吸収されにくい性質を持つため、腸内に留まって腸内細菌に作用できます。
以前は同じような性質を持つカナマイシンなどの抗菌薬が肝性脳症の治療に使用されてきましたが、リフキシマは日本で初めて肝性脳症の高アンモニア血症の改善を正式に認められた薬剤です。
リフキシマにはリフキシマ錠200mgという錠剤の先発薬がありますが、後発品は販売されていません。
通常1日3回食後に服用することで肝性脳症の高アンモニア血症の改善効果があるといわれています。
副作用には便秘や下痢、吐き気などの消化器症状や、めまいや味覚障害などの精神神経症状が見られることがあり、ごく稀に偽膜性大腸炎やクロストリディオイデス・ディフィシル関連下痢症といった重篤な副作用を引き起こす恐れがあります。
また、これら副作用の観点から妊婦は相対禁止、結核症や肺結核、重度の肝機能障害がある方、小児までの子ども、授乳婦は注意して使用してください。
飲み合わせに関しては、シクロスポリンやエチニルエストラジオールは薬剤の影響を受けやすいので、併用を希望する時は医師または薬剤師に相談するとよいでしょう。
カルニチン
多くの人は必要とされる量が体内で産生されるカルニチンですが、体質や薬剤の副作用などの様々な理由で十分な量を産生できず、カルニチン欠乏症となると高アンモニア血症を引き起こす恐れがあります。
このようなカルニチンの欠乏が原因で高アンモニア血症を引き起こす薬剤の1つが抗てんかん薬のバルプロ酸です。
バルプロ酸は脳内のGABAの神経伝達物質を促進させて脳内の興奮を抑え、てんかんの諸症状や躁病、片頭痛発作の改善などに使用する薬剤ですが、0.1~5%未満の割合で高アンモニア血症が現れる可能性があるとされています。
このバルプロ酸を服用するとバルプロ酸代謝によってカルニチンが欠乏し、尿素サイクルがうまく働かなくなることで体内にアンモニアが増えてしまい、高アンモニア血症を引き起こすといわれています。
そのため、バルプロ酸服用中の高アンモニア血症ではカルニチンを充足させるために、エルカルチンFFをはじめとするカルニチン欠乏症治療薬を使用します。
カルニチンFFには点滴薬の他、液剤や錠剤といった内服薬が製品化されており、カルニチン欠乏症を改善する効果があります。
主な副作用は食欲不振や下痢、吐き気、腹痛などの消化器症状、発疹や痒みといった皮膚症状です。
重篤な副作用の報告はありませんが、過敏症や血液透析は使用禁止、妊婦は相対禁止となっているのに加え、重篤な腎機能障害を抱えている方や透析を行っている方は慎重に投与する必要があります。
また、糖尿病治療薬は低血糖症状を引き起こす可能性があることから、併用を希望する時には医師や薬剤師に相談してください。
カルニチンは肉や魚、乳製品などの動物性食品から摂取することができる栄養素です。
欠乏症を防ぐためにも日頃からバランスのよい食事を意識しましょう。
アミノレバン
アミノレバンは肝性脳症を伴う慢性肝不全患者の栄養状態を改善する効果がある薬剤で、アンモニアを解毒する作用やエネルギーを補う作用があります。
肝臓の機能が低下すると体内の栄養状態が悪化して血中のアミノ酸バランスが乱れ、アンモニアを解毒する働きが弱まるため、アミノレバンを服用して栄養バランスを整えてアンモニアの解毒作用を高めていきます。
アミノレバンには点滴薬と内服薬の剤型があり、内服薬のアミノレバンENは水180mlに1包を溶かしてドリンクの状態にして服用しますが、飲みにくい場合には冷やしたり、ジュースなどに混ぜたり工夫するとよいでしょう。
アミノレバンENの副作用として発疹やかゆみ、下痢、吐き気、胸やけなどが現れる可能性があり、重篤な副作用として低血糖や震え、動悸などが報告されています。
また、アミノレバンENにはカゼインが添加物として含まれていることから牛乳アレルギーがある場合は使用禁止、ビタミンAが過剰摂取になりやすく胎児の奇形発現の増加が推定されるため妊婦も相対禁止です。
飲み合わせに影響を与える薬剤の報告はありませんが、果物の生ジュースを混ぜると固まってしまうことがあるので避けましょう。
ラクツロースは高アンモニア血症の第一選択薬
ラクツロースは高アンモニア血症の第一選択薬で、腸内を酸性に傾けてアンモニアの吸収を低下させて脳への移行を抑える作用があることから、肝性脳症の治療に使用されています。
合成二糖類のため比較的安全性の高い薬剤ですが、糖ガラクトースの代謝に障害を持つガラクトース血症の方の使用は禁忌です。
このようなラクツロースを使用できない方は、リフキシマなどの他の高アンモニア血症治療薬を検討していくのも1つの手段といえるでしょう。