脳血管障害では脳の血流が悪くなり、脳からの指令がうまく伝わらない状態となって、めまいや意欲低下などの症状が現れることがあります。
このような症状を改善するのが脳循環代謝改善薬ですが、過去に使われていた多くの脳循環代謝改善薬が承認を取り消されるといった事態も起きており、使用にあたって不安を覚えている方も多いのかもしれません。
今回は脳循環代謝改善薬の効果や副作用などを解説しながら、現在使用されている脳循環代謝改善薬と販売中止となった脳循環代謝改善薬について紹介していきます。
脳は身体の様々な部分をコントロールしている大切な臓器です。
脳循環代謝改善薬について理解し、正しく使用していきましょう。
脳循環代謝改善薬とは
脳循環代謝改善薬は脳代謝改善薬とも呼ばれる薬剤で、主に脳梗塞後遺症の治療に使用されます。
様々な種類の脳循環代謝改善薬がありますが、ここでは脳循環代謝改善薬の一般的な効果や副作用について解説していきます。
脳循環代謝改善薬の効果
脳梗塞は脳の血管が狭くなったり塞がれたりして血流が滞って、脳神経細胞に血液が届かなくなる病気です。
脳に血液が届かなくなることで脳の細胞が死んでしまい、一命を取りとめたとしても運動麻痺や感覚障害、意識障害などの様々な後遺症が残ってしまう可能性が高い病気であるといわれています。
脳梗塞後遺症には脳の血流が悪化して脳に酸素やエネルギーが運ばれなくなることで起きるめまいや意欲低下などの症状がありますが、脳循環代謝改善薬は脳の血流を良くして、これら症状を改善する効果があります。
また、脳梗塞をはじめとする脳卒中を発症した後に認知症が起こる脳卒中後認知症の意欲低下や自発性低下においても脳循環代謝改善薬が有効であるとされ、さらに一部の薬剤では脳血管性認知症の認知機能改善に効果があるともいわれています。
脳循環代謝改善薬の副作用
脳循環代謝改善薬の副作用には吐き気や腹痛、食欲不振といった消化器症状、頭痛や傾眠、不眠といった精神神経系症状があり、ごく稀に肝機能障害を引き起こす恐れがあります。
脳循環代謝改善薬を服用中に黄疸や発熱、倦怠感などの症状が継続する時には重症化を防ぐためにも放置せずに医療機関を受診してください。
また、薬剤の種類によっては血小板の減少や蕁麻疹、身体の痺れなどの副作用も報告されています。
現在使用されている脳循環代謝改善薬一覧
血流を良くする成分としてビタミンEやヘプロニカート、漢方の附子や桂皮などが配合された市販薬は販売されていますが、これらには眼や身体の血流を良くする効果があるものの、脳の血流を良くする効能はありません。
そのため脳循環代謝改善薬は処方薬のみの取り扱いとなります。
現在使用されている脳循環代謝改善薬の一覧はこちらです。
| 一般名 | 商品名 |
|---|---|
| イブジラスト | ケタスカプセル10mg |
| ニセルゴリン | ・サアミオン錠5mg ・サアミオン散1% ・ニセルゴリン1%細粒 ・ニセルゴリン錠5mg |
| イフェンプロジル酒石酸塩 | ・セロクラール錠10mg ・セロクラール錠20mg ・イフェンプロジル酒石酸塩錠10mg ・イフェンプロジル酒石酸塩錠20mg |
ここからは脳循環代謝改善薬の成分ごとの特徴を紹介していきます。
イブジラスト
イブジラストを主成分とする脳循環代謝改善薬は先発医薬品のケタスカプセル10mgがありますが、後発品はありません。
イブジラストは脳循環代謝改善薬として脳梗塞後遺症による慢性脳循環障害が原因となるめまいを改善する効果に加えて、抗アレルギー作用を持つことから気管支喘息の治療に用いられることもあります。
慢性脳循環障害によるめまいに関しては、イブジラストに換算して通常成人は1回10mgを1日3回服用しますが、副作用のリスク軽減の点から服用開始後12週で効果が現れない時には使用を中止することとなっています。
イブジラストの副作用は消化器症状や精神神経症状、皮膚症状の他、重篤な副作用として血小板減少や肝機能障害を引き起こす恐れがあるので注意が必要です。
また、止血できなくなってしまう可能性があることから頭蓋内出血での止血が完成していない方は使用禁止、動物実験での新生仔発育遅延などの報告があることから妊娠中には服用しない方が望ましいとされています。
他にも肝機能障害や長期ステロイド療法、脳梗塞急性期にある方、小児や高齢者は副作用に注意して使用してください。
ニセルゴリン
ニセルゴリンを主成分とする脳循環代謝改善薬には先発医薬品のサアミオン錠5mgとサアミオン散1%、後発品のニセルゴリン1%細粒とニセルゴリン錠5mgが販売されており、散剤は嚥下機能が低下した方も使用しやすいメリットがあります。
ニセルゴリンは脳梗塞後遺症による慢性脳循環障害が原因となる意欲低下に適応があることに加え、脳血管性認知症の認知機能の改善効果も期待できるといわれています。
さらに応用として、医師の判断によっては耳鳴りやめまいなどの別の病気に処方されるケースもあるようです。
ニセルゴリンに換算して成人であれば通常1日15mgを3回に分けて服用しますが、イブジラストと同様に、使用開始後12週経っても効果が認められない時には使用を中止しなければなりません。
しかしながら、ニセルゴリンは穏やかに作用する性質があるため、効果が現れるまで約1~2ヵ月かかる可能性があります。
効果が穏やかなので副作用は起きにくいとされていますが、消化器症状や精神神経症状、肝機能障害などが見られることがあります。
脳の血流を良くする薬剤のため頭蓋内出血の止血ができていない方の使用は禁止、動物実験で胎児や出生仔の発育抑制が報告されていることから妊婦は治療の有益性が危険性を上回る時のみ使用を検討してください。
また、小児や高齢者は副作用に注意して使用する必要があります。
イフェンプロジル酒石酸塩
イフェンプロジル酒石酸塩を主成分とする脳循環代謝改善薬には先発医薬品のセロクラール錠10mgとセロクラール錠20mg、後発品にはイフェンプロジル酒石酸塩錠10mgとイフェンプロジル酒石酸塩錠20mgがあります。
脳梗塞後遺症と脳出血後遺症のめまいの改善に適応があるとされていますが、医師の判断によっては耳鳴りや頭痛、めまいなどの症状に使用されることもあるようです。
イフェンプロジル酒石酸塩に換算して1日20mgを3回の食後に服用するのが通常ですが、他の脳循環代謝改善薬と同様に12週使用しても効果が現れない時には使用を中止します。
作用が穏やかなので副作用は少ないといわれていますが、口渇や吐き気、頭痛、動悸などが見られることがあります。
また、血流を良くする薬剤であることから頭蓋内出血が止まっていない方の使用は禁止、胎児に影響を及ぼす可能性が否定できないことから妊婦は希望禁止となっています。
さらに低血圧や心悸亢進の方、高齢者は副作用に注意して使用してください。
血をサラサラにするワルファリンやチクロピジンなどの薬剤と併用すると出血しやすくなる他、起立性低血圧治療薬のドロキシドパの作用を弱める可能性があるので飲み合わせに注意が必要です。
販売中止となった脳循環代謝改善薬
日本国内では脳梗塞をはじめとする脳卒中による脳血管障害を発症する方が多いことから、めまいや意欲低下を改善する脳循環代謝改善薬の需要が高く、様々な成分の薬剤が使用されていました。
しかしながら、1990年代に行われたプラセボとの比較試験による再評価で効果が認められない薬剤が多数見つかり、当時の代表的な脳循環代謝改善薬であったアバンやカランも承認を取り消されています。
この承認取消の結果が出た後も「使った、治った、効いた」の3た論理による反論は続きましたが、大きな市場の大変革を経て臨床試験の質の向上の確立へとつながったといわれています。
脳梗塞後遺症によるめまいのリハビリ
脳梗塞後遺症のめまいの改善には脳循環代謝改善薬を使用していきますが、同時にリハビリを行うことで症状の改善がより期待できます。
脳梗塞後遺症によるめまいの種類には、ぐるぐる回っているような感覚になる回転性めまい、ふわふわと浮いているような感覚になる浮遊性めまい、目の前が急に真っ暗になる前失神性めまいの3種類があります。
脳梗塞発症直後には回転性めまいが見られることが多いとされており、治療を経てもめまいやふらつきが残る場合には後遺症として治療やリハビリを進めていく必要があります。
脳梗塞後遺症のふらつきにはフレンケル体操と前庭リハビリテーションを行うことが多いです。
フレンケル体操は小脳が原因となるふらつきに対して身体の位置感覚やバランスを改善する目的で行うリハビリで、120種類もの体操項目があるのが特徴です。
前庭リハビリテーションは姿勢保持や歩行などの日常的な動作を改善する訓練で、平衡感覚を司る前庭の機能を高める効果が期待できます。
脳循環代謝改善薬の服用と併用してこれらのリハビリを行うことで、ふらつきが改善されて転倒しにくくなります。
無理なく少しずつリハビリを続け、体調を整えていきましょう。
脳循環代謝改善薬は脳の血流を良くする薬
脳循環代謝改善薬は脳の血流を良くして、脳梗塞後遺症におけるめまいや意欲低下といった症状を改善させる薬剤です。
もともと脳血管障害の発症が多い日本国内では様々な脳循環代謝改善薬が使用されていましたが、1990年代の再評価によって効果が認められない薬剤は承認が取り消され販売中止となりました。
現在使用されている脳循環代謝改善薬はイブジラスト、ニセルゴリン、イフェンプロジル酒石酸塩を主成分とする薬剤で、成分によって脳梗塞後遺症の症状に対する効果は少しずつ異なります。
用法用量も成分ごとに異なりますが、どの薬剤も12週使用して効果が現れない場合には使用を中止しなければならないとされています。
また、脳梗塞後遺症のめまいについては脳循環代謝改善薬の服用しながら、リハビリを行うことも大切です。
体調を整えるためにも、無理のない範囲で日々の生活に取り入れていきましょう。