透析治療を続けるなかで、骨の痛みや体調の変化に悩む方は少なくありません。
これらの症状は、副甲状腺ホルモンの過剰分泌による二次性副甲状腺機能亢進症が関係していることがあります。
オルケディアは、こうした副甲状腺ホルモンの異常を抑え、骨の健康維持や心血管疾患のリスクを軽減するために使われるカルシウム受容体作動薬です。
今回はオルケディアの効果や副作用、禁忌に加えて、同じカルシウム受容体作動薬に分類されるレグパラやパーサビブとの違いについても解説していきます。
二次性副甲状腺機能亢進症とは
二次性副甲状腺機能亢進症は体内のカルシウムやリンのバランスが崩れることで、副甲状腺から分泌されるホルモンである副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態を指し、特に慢性腎臓病や透析治療を受けている方に多く見られる病気です。
腎臓の機能が低下すると、カルシウムの吸収が悪くなって血液中のカルシウム濃度が下がりますが、これに反応して、副甲状腺はカルシウム濃度を上げようと副甲状腺ホルモンを多く分泌します。
これに加えて、腎臓でのリン排出が不十分となることでも血中リンが上昇して副甲状腺ホルモン分泌を刺激します。
このような副甲状腺ホルモンの過剰分泌が続くと骨からカルシウムが溶け出し、骨の強度が低下して骨折や骨の変形が起こりやすくなります。
さらに、副甲状腺ホルモンの過剰分泌は血管や心臓にも悪影響を及ぼし、動脈硬化や心疾患のリスクを高めるとされています。
このような状態を引き起こす二次性副甲状腺機能亢進症は、食事療法やリン吸着薬を使用してよって血中リンのバランスを調整したり、カルシウム受容体作動薬を用いて副甲状腺ホルモンの分泌を抑えたりして治療をしていきます。
カルシウム受容体作動薬オルケディアとは
カルシウム受容体作動薬のオルケディアはエボカルセトが主成分の先発医薬品で、オルケディア錠1mg、オルケディア錠2mg、オルケディア錠4mgがありますが、同じ成分を含む後発医薬品はありません。
オルケディアの作用機序・適応
オルケディアはカルシウム受容体作動薬に分類される薬剤で、副甲状腺に存在するカルシウム受容体に作用して身体に血中カルシウムが十分にあると思わせて副甲状腺ホルモンの分泌を抑制する薬剤です。
これにより、腎不全による透析などによって副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される二次性副甲状腺機能亢進症において、血清副甲状腺ホルモン血清カルシウムを低下させて、カルシウムやリンのバランスを整え、骨の破壊を防ぐ作用があります。
オルケディアの適応は維持透析中の二次性副甲状腺機能亢進症と、副甲状腺摘出術不能原発性副甲状腺機能亢進症や術後再発の原発性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺癌の高カルシウム血症です。
オルケディアの用法・用量
オルケディアは成人であれば1日1回主成分として1mgを服用するのが基本で、症状によって量は増減します。
低用量の約1~2mgから開始して血中向上線ホルモンやカルシウム濃度モニタリングしながら用量を調整することによって最大で12mgまで増量可能ですが、自己判断で量を変更することはやめましょう。
また、透析を受けている患者さんは血中カルシウム濃度が下がりやすいため、医師の指示に従って慎重に使用することが大切です。
オルケディアと一緒にカルシウム製剤や活性型ビタミンD、リン吸着薬などと併用されることもあるので、飲み忘れや飲み間違いのないように気をつけてください。
オルケディアの副作用
オルケディアの副作用には吐き気や下痢、食欲低下といった胃腸症状が起こることがありますが、特に注意したいのが低カルシウム血症です。
低カルシウム血症は副甲状腺ホルモンが抑制されすぎることが原因で、初期症状である指先や唇の痺れや血圧低下、痙攣、不整脈などがあらわれた時にはすぐに医療機関へ連絡してください。
低カルシウム血症を防ぐためには定期検査を行い、血中カルシウム濃度や副甲状腺ホルモンの値を確認することが大切です。
オルケディアの禁忌・飲み合わせ
オルケディアは過敏症の方と妊婦は使用禁止、肝機能障害や低カルシウム血症の方、小児、高齢者も副作用を引き起こすリスクが高いので注意して使用する必要があります。
また、動物実験で母乳への移行が確認されているため、服用中は授乳をしない方が望ましいとされています。
飲み合わせに関しても、副腎皮質ホルモン剤やアレンドロン酸ナトリウム水和物、ビスホスホン酸塩系骨吸収抑制剤などとの相互作用によって血清カルシウム濃度が低下する恐れがあります。
反対にテオフィリンは作用が増強するため、こちらも注意が必要です。
カルシウム受容体作動薬の一覧と特徴
ここまでオルケディアを解説してきましたが、他にもカルシウム受容体作動薬に分類される薬剤は存在します。
日本で使用されている代表的なカルシウム受容体作動薬を一覧表にまとめました。
| 一般名 | 製品名 | 剤型 |
|---|---|---|
| シナカルセト塩酸塩 | レグパラ | 錠剤 |
| エテルカルセチド塩酸塩 | パーサビブ | 注射剤 |
| エボカルセト | オルケディア | 錠剤 |
レグパラとパーサビブもオルケディアと作用機序は同じとされており、カルシウム受容体に作用して、副甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑制します。
ただし、剤型や副作用などにやや違いがあるため、簡潔に特徴を解説していきます。
レグパラ
レグパラはシナカルセト塩酸塩を主成分とする錠剤で、薬剤の有効性はほぼ同じとされているものの、吐き気や下痢などの消化器の副作用を起こしやすい傾向にあります。
さらに重篤な副作用として低カルシウム血症の他に、意識レベルの低下や消化管出血、消化管潰瘍などの報告もあるので注意してください。
このような副作用があることから過敏症の方は使用禁止、消化管腫瘍や消化管出血、低カルシウム血症、肝機能障害、痙攣発作がある方は注意して服用する必要があります。
また、併用注意として、マクロライド系抗生物質やアゾール系抗真菌剤、CYP3A4阻害薬、CYP2D6阻害薬などもあげられています。
パーサビブ
パーサビブは透析施設で透析終了時に静脈内投与される注射剤であり、患者さん自身が自宅で管理することはありません。
通常成人には週3回の透析終了時の返血時に透析回路静脈側に注入する形で使用していきます。
錠剤のオルケディアやレグパラのように服用しないため、消化器症状の副作用は起きにくいとされていますが、心房細動や心筋梗塞、頻脈性不整脈といった循環器症状を引き起こす恐れがあります。
また、血清カルシウム濃度が低下する恐れがあるため、デノスマブやリセドロン酸ナトリウム水和物といった薬剤との併用には注意が必要です。
二次性副甲状腺機能亢進症における生活の注意点
二次性副甲状腺機能亢進症は、慢性腎不全によってカルシウムやリンのバランスが崩れて副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。
二次性副甲状腺機能亢進症の治療にはオルケディアをはじめとするカルシウム受容体作動薬などを使用しますが、病状を悪化させないために日常生活においても注意を払うことが大切です。
リンの摂取制限
リンは肉類、魚、介類、卵、黄乳、製品、加工、食品などに多く含まれています。
特に加工食品に含まれる無機リンは吸収率が高く、過剰摂取につながりやすいため注意が必要です。
血清リン値を管理するためには、まず加工食品を避けることが大切です。
ハムやウインナーなどの食肉加工品、カップ?などの?類、ジュースなどに多く含まれているので控えたり、お湯に溶け出す性質を利用して茹でたりしてから食べるといった工夫をするとよいでしょう。
この時、ゆで汁をスープに利用しないでください。
また、タンパク質も摂り過ぎないように配慮する必要があります。
ただし、タンパク質を完全に避けるのは健康上にも好ましくないことから、リンの含有量が少ないものを選んで食べるようにしてください。
リンが多いのは骨ごと食べるイワシやシラスなど、レバー、卵黄、脱脂粉乳、チーズなどなので、リンが少ない卵白などからタンパク質を摂るとよいでしょう。
適度な運動と生活リズムの維持
適度な運動は骨や筋肉の健康維持に役立ち、これにプラスして規則正しい生活リズムに整えることで、全身の健康状態を良好に保つことができます。
特に体力や筋力が低下しやすい透析患者は運動継続することで生命予後を大きく改善させることに加え、透析中の血液循環が高まり透析の質が向上して合併症なども起こりにくくなることが期待できます。
医師の指示のもと、日常生活でも意識して運動を行っていくようにしましょう。
また、ストレスは二次性副甲状腺機能亢進症を悪化させる要因の1つです。
ストレスはできるだけ避け、十分な睡眠を確保できるような規則正しい生活を心掛けてください。
カルシウム受容体作動薬オルケディアは二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬
カルシウム受容体作動薬のオルケディアは、透析患者に多く見られる副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬です。
主成分のエボカルセトが副甲状腺のカルシウム受容体に作用し、体内のカルシウム濃度を正常に保とうとする働きを利用して、副甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑制します。
適応は、維持透析中の二次性副甲状腺機能亢進症や、副甲状腺手術が困難な原発性副甲状腺機能亢進症、高カルシウム血症を伴う副甲状腺がんです。
同じカルシウム受容体作動薬の服用薬であるレグパラと比較すると、オルケディアは胃腸障害が起きにくいとされていますが、どちらの薬剤も低カルシウム血症については注意が必要です。
また、二次性副甲状腺機能亢進症の治療においては、カルシウム受容体作動薬の服用だけでなく、生活を改善することも大切です。
リンを多く含む加工品は避けタンパク質も必要以上に摂取しないようにし、適度な運動や規則正しい生活を心掛けていくとよいでしょう。