腎臓の働きが悪くなり、赤血球をつくるために必要なホルモンが腎臓から十分に出なくなることで起こる貧血を腎性貧血といいます。
この赤血球をつくるためのホルモンであるエリスロポエチン(EPO)が不足して腎性貧血になると、疲れやすくなったり息切れが起こったりします。
さらに病気が進行すると心臓をはじめとする臓器にも負担がかかることから、早めに治療を開始する必要があります。
腎性貧血の治療の1つとして、エリスロポエチンを身体の中に補うことで赤血球の数を増やして貧血を改善するEPO注射があります。
今回はEPO注射の効果や副作用に加え、腎性貧血の症状や日常生活における注意点について解説していきます。
腎性貧血を患っている方や透析治療を受けている方は参考にしてください。
EPOとは何か?医療におけるエリスロポエチンの役割と腎性貧血
ここではまずEPOという物質と腎性貧血の原因・症状について解説していきます。
EPOとは
EPOはエリスロポエチンという、体内で赤血球をつくるために必要な腎臓でつくられるホルモンの略称です。
赤血球は血液中で酸素を運ぶ役割を担っていますが、赤血球の数が減ると身体に十分な酸素が行き渡らなくなって疲れやすさや動悸、息切れといった、いわゆる貧血の症状があらわれます。
なかでも慢性の腎臓病を患っている方や透析を受けている方は腎臓の働きが低下しているため、エリスロポエチン(EPO)をうまく作れなくなり、腎性貧血を引き起こします。
骨髄で赤血球が作られる時に、その産生を調整しているのがエリスロポエチン(EPO)ですが、腎機能が低下していると、この調整機能に異常が生じて赤血球をつくる指示が出せず、貧血状態に陥ってしまいます。
このような状態を改善するのがEPO注射で、体内で不足しているエリスロポエチンを外から補うことで赤血球の生成を促す効果があります。
このようにエリスロポエチン(EPO)は体内で血液をつくる仕組みに深く関わっており、特に腎性貧血の治療においては重要な役割を担っているのです。
腎性貧血に見られる主な症状
腎性貧血では、赤血球の減少により全身への酸素供給が不足するため、様々な症状が現れます。
最も多いと言われているのが倦怠感や疲れやすさ、息切れ、動悸で、軽い運動や階段を上がるような時でも息が苦しくなってしまうことがあります。
また、頭痛や集中力の低下、めまい、立ちくらみなど、脳への酸素供給が不十分な状態の時に起きる症状もあり、特に高齢者ではふらつきによる転倒リスクが高まるため、注意が必要です。
さらに睡眠の質が低下したり、食欲不振になったりするケースもあることから、日常生活全般に支障をきたすだけでなく、症状が続くことにより心臓にも負担がかかって重篤な心臓の病気を招く恐れもあります。
このような事態を避けるためにも、これまでお話したような症状が続くような時には腎性貧血を疑い、できるだけ早く医療機関を受診してEPO注射による治療を開始しましょう。
EPO注射の効果や用法用量と副作用
EPO注射の中でもエポエチンが主成分の注射薬には、先発医薬品のエスポーとエポジン、後発医薬品のエポエチンアルファBSという商品が販売されています。
EPO注射の適応・効果
エリスロポエチン(EPO)が不足して赤血球がつくられなくなる時に使用するのがEPO注射で、血液検査でヘモグロビンの値が一定以下に下がった場合や、透析患者で鉄剤の補充だけでは改善が難しい場合において治療が選択されます。
EPO注射の主な効果は血球の生成を促進することで貧血症状を改善し、全身状態を安定させることです。
腎性貧血により低下したヘモグロビン値が正常範囲に近づくことで、疲労感や息切れが軽減され、日常生活の質が向上します。
さらに、貧血が改善されることで心臓にかかる負担も軽減され、心血管合併症のリスクを下げる効果も期待されています。
このような効果があることから、EPO注射の適応は透析や連続携行式腹膜灌流施行中における腎性貧血、手術のための自己血貯血、未熟児貧血などとなっています。
EPO注射の用法・用量
一般的に複数回の検査でHb11g/dl~10g/dL未満となった時に腎性貧血の治療を開始するとされています。
投与のタイミングについては患者さんの症状において異なりますが、透析中の腎性貧血では透析の際にエポエチンの静脈内投与を週3回の頻度で行い、皮下投与では週1回の投与を行うのが基本とされています。
また、貧血の改善効果が得られた後も維持を目的に投与は続きますが、頻度は急性期よりも減るケースが多くなっています。
EPO注射の副作用
EPO注射エポエチンの副作用には血圧上昇や発疹、皮膚の痒み、動悸などがあります。
血圧上昇に関してはEPO注射によって赤血球が増えて血液の粘度が増すことで血圧が上昇すると考えられています。
高血圧は様々な血管の病気を引き起こす恐れがあるため、注意してください。
重篤な副作用として、アナフィラキシーや高血圧性脳症、高血圧性脳出血、心筋梗塞、肺梗塞、脳梗塞、肝機能障害などが報告されています。
このような緊急性の高い病気が起こる可能性があるため、体調に異変を感じたらすぐに医療機関を受診するようにしてください。
EPO注射の禁忌
EPO注射は過敏症や造血機能障害がある方の使用は禁止、妊婦も有効性がリスクを上回る場合だけ使用を検討する相対禁止となっています。
また、赤血球が多くなって血液の粘度が高まることから、血栓塞栓症や高血圧症、心筋梗塞、脳梗塞、肺梗塞の方は症状が悪化しないように慎重に使用する必要があります。
さらに副作用のリスクが高い新生児や高齢者の使用についても注意を払うようにしましょう。
腎性貧血に使われるEPO注射以外の薬の一覧
腎性貧血の治療ではEPO注射以外にも様々注射薬が使用されることがあり、代表的なEPO注射としてダルベポエチンアルファやエポエチンベータペゴルなどがあります。
どちらの薬剤も共通していえるのがエリスロポエチンを補う働きを持ち、不足した赤血球の産生を促す働きがあることですが、薬剤の種類によって作用時間が異なるとされています。
例えば、ダルベポエチンアルファを主成分とするネスプは、エポエチンよりも作用時間が長く、1~2週間に約1回の投与となっています。
さらにエポエチンベータペゴルを主成分とするミルセラは、2~4週間が一般的な投与の頻度となっており、患者さんの通院負担の軽減が期待できます。
このように、腎性貧血に使用される注射薬には、それぞれ異なる作用時間と投与頻度があり、患者さんの状態やライフスタイルに応じて適切な薬剤が選ばれます。
なお、いずれの製剤を使用する場合でも、赤血球をつくるために必要な鉄分が不足していると十分な効果が得られないことがあるため、必要に応じて鉄剤の併用が行われます。
EPO注射における生活と食事のポイント
EPO注射は腎性貧血において重要となる治療法ですが、注射だけで十分な治療効果を得られるとはいえず、日常生活や食事の管理を併せて行うことが大切となります。
腎性貧血の方は次のようなポイントに注意した生活を心掛けましょう。
無理のない運動で体力を維持する
身体を動かすことで筋力や体力が保たれて酸素の供給がスムーズになるため、日常生活では軽い運動を継続することが重要です。
無理な運動や疲労を伴う活動は避ける必要がありますが、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を取り入れて体力維持に努めましょう。
感染予防の徹底
腎性貧血の患者さんは免疫機能が低下しやすいため、感染予防が欠かせません。
外出後の手洗いやうがい、マスクの使用を心がけ、必要に応じて医師と相談しながらインフルエンザなどのワクチン接種を検討しましょう。
禁煙と水分管理
喫煙は血液中の酸素運搬能力を下げ、エリスロポエチン(EPO)の働きを妨げる要因になることから禁煙を実践してください。
また、適切な水分補給は必要ですが、透析を受けている場合には水分制限にも注意してください。
良質なたんぱく質を適切に摂取する
腎機能が低下している場合、たんぱく質の摂取制限が必要になりますが、赤血球の材料となるたんぱく質は不足させてはいけません。
そのため、摂取量に配慮しながらも、肉・魚・卵などの動物性たんぱく質を中心に、良質なたんぱく質を効率よく取り入れることが推奨されます。
エネルギー不足を防ぐための工夫
たんぱく質制限によって食事量が減少すると、エネルギー不足に陥るおそれがあります。
この状態が続くと、体内の筋肉が分解されて状態が悪化し、貧血が進行する可能性もあります。
これを防ぐためにも低たんぱく食品を活用したり、1日3食を規則正しく摂ったりするなどエネルギーが不足しないような工夫をする必要があります。
薬の服用と定期検査
EPO注射に加えて、処方されている鉄剤や他の薬剤も正しく服用することが重要です。
自己判断で市販薬やサプリメントを使用すると薬剤の効果が減弱したり、思わぬ副作用を招いたりする恐れがあるため注意しましょう。
また、定期的な通院や検査を通じて、治療効果や副作用を確認することも大切です。
EPO注射は腎性貧血の治療薬
EPO注射は腎性貧血の治療に用いられるエリスロポエチンを主成分とする薬剤で、腎臓の機能低下により不足したホルモンを補い、赤血球の産生を促進する作用を持ちます。
これにより、倦怠感や息切れなどの貧血症状を改善し、心臓への負担の軽減が期待できます。
EPO注射の副作用には高血圧や皮膚のかゆみ、重篤な場合は心筋梗塞や脳出血などがあることから、使用中に異変を感じた時には速やかに医療機関を受診することが大切です。
また、腎性貧血への治療効果を高めるためには、適切な栄養摂取や軽い運動、禁煙、感染症予防などを心掛け、身体に優しい生活を目指していきましょう。