パーキンソン病は動作の遅れや手足のふるえ、筋肉のこわばりなどがあらわれる神経の病気です。 進行を完全に止める治療法はまだありませんが、症状をやわらげるための薬剤はいくつか存在し、その中の1つにゾニサミドがあります。 もともとはてんかんの治療薬として開発されたゾニサミドはパーキンソン病への効果も認められ、2015年からパーキンソン病の治療にも使用されるようになりました。
この記事ではゾニサミドの作用機序や効果、使用方法、副作用、エクセグランや他のパーキンソン病治療薬との違いについて解説していきます。 正しく使用できるようにゾニサミドの知識を深めていきましょう。
パーキンソン病とは
パーキンソン病は主に50歳以上の中高年以降に発症しやすい進行性の神経疾患で、脳内の神経伝達物質の1つであるドパミンが不足することによって、様々な運動障害があらわれる病気です。
具体的には動きが遅くなったり、筋肉がこわばったり、手足のふるえや姿勢が保てなくなるなどの運動症状が起こり、これらに加えて、うつ状態や便秘、睡眠障害、認知機能の低下などの非運動症状が見られることもあります。
パーキンソン病の原因はまだ完全には解明されていませんが、神経細胞が変性し、黒質と呼ばれる部位から分泌されるドパミンが減少することが要因とされ、加齢や遺伝的要因、環境要因などが複雑に関連していると考えられています。
パーキンソン病の症状のあらわれ方や進行の速さには個人差がありますが、ゆっくりと進行するケースが多く、初期は自分自身では気付きにくいとも言われています。 しかしながら、早期に発見して適切な治療を行い進行を遅らせることができれば、生活の質を向上させることも可能です。 このようなことからも、初期症状としてあらわれやすい手足のふるえなどが見られた時には、早めに医療機関を受診しましょう。
現在の医学では根本的にパーキンソン病を完治させる治療法は確立されていませんが、薬物療法によって症状を緩和し、日常生活を維持することは十分に可能です。 その治療において重要な役割を果たすのがドパミンの働きを補う薬剤であり、ゾニサミドもその1つとして使用されています。
パーキンソン病の治療におけるゾニサミドの主な使用方法
パーキンソン病の治療ではドパミンの働きを補うことを目的とした薬物療法が中心となり、中でもレボドパは第一選択薬として広く使われています。
しかしながら、レボドパを長期間使用していると薬剤の効き目が不安定になるウェアリングオフ現象が起こり、症状が出る時間が増えることがあります。 このような場合にゾニサミドとレボドパを併用していく方法を取るケースもあります。
ゾニサミドはもともと抗てんかん薬として開発されましたが、パーキンソン病患者が痙攣を起こした時にゾニサミドを使用したところ、痙攣だけでなくパーキンソン症状が改善されたことをきっかけにパーキンソン病における研究が始まりました。 そして、抗てんかん薬として使用されていたエクセグランとは別に、2015年にパーキンソン病に対する適応を取得し、ゾニサミドを主成分とするトレリーフという商品が発売されました。
エクセグランとトレリーフの大きな違いは適応する病気の種類ですが、他にもゾニサミドの配合量がエクセグランには100mg錠であるのに対し、トレリーフは25mgと50mgしかありません。 また、服用回数においても抗てんかん薬のエクセグランは1日1~3回、パーキンソン病治療薬のトレリーフは1日1回となっています。
ゾニサミドはレボドパ製剤を服用しているにもかかわらず症状が十分に改善しない患者さんへの追加療法として使用する薬剤であるため、パーキンソン病の治療においては単独で使用することはありません。 このようにゾニサミドはパーキンソン病治療の補助薬としての役割を担っている薬剤といえるのです。
ゾニサミドの作用とパーキンソン病への効果
ここでは、パーキンソンの補助治療薬としても使用されるようになったゾニサミドの作用機序や効果について解説していきます。
ゾニサミドの作用機序とは
もともと抗てんかん薬として開発されたゾニサミドには、ナトリウムチャネルやカルシウムチャネルを抑制して、神経の過剰な興奮を抑える作用があるとされていました。
一方、パーキンソン病に対する効果のメカニズムは、てんかんとは異なる点が注目されています。 パーキンソン病では脳内の黒質という部分でドパミンが減少することにより、運動障害が起こりますが、ゾニサミドはこのドパミンの代謝や働きに関与して、症状を改善すると考えられています。
まず、ゾニサミドはドパミンを分解する作用を持つMAO-Bと呼ばれるモノアミン酸化酵素Bという酵素の働きを阻害する作用を持ち、脳内のドパミン濃度を高める効果が期待されています。 それに加えて、ゾニサミドはドパミンの放出を促進する働きや、ドパミンの合成に関わる酵素を活性化させる可能性もあるともいわれています。
このようにゾニサミドは、複数の作用によってパーキンソン病の症状の改善に関与していると考えられています。
ゾニサミドのパーキンソン病への効果
ゾニサミドはレボドパ製剤による治療を受けているにもかかわらず、十分な効果が得られないパーキンソン病患者に対して補助的に使用される薬剤であり、臨床試験ではゾニサミドを追加投与することで運動症状が改善されることが確認されています。
具体的には日中のすくみ足や動作の遅れ、筋肉のこわばりといった症状に対して、改善が見られるとされ、薬剤の効果が突然切れたり戻ったりするオン・オフ現象の緩和も期待できます。
しかしながら、ゾニサミドの効果には個人差があり、すべての患者さんに同様の改善が見られるわけではなく、さらに効果があらわれるまでに時間がかかる場合もあります。 そのため、即効性に期待するのではなく、医師の指示のもと根気強く服用を続けることが大切です。
パーキンソン治療におけるゾニサミドの使用方法と注意点
ゾニサミドはパーキンソン病の治療において重要な役割を担っている薬剤ですが、他の薬剤と同様に副作用の報告や禁忌が定められています。 安全に使用するためにも用法用量や注意点を正しく守ってください。
ゾニサミドの用法・用量
ゾニサミドには先発医薬品のトレリーフOD錠25mgと50mg、後発医薬品のゾニサミドOD錠25mgと50mgが製造されています。 先発医薬品と後発医薬品は添加物や形状が異なる場合がありますが、有効成分の種類や得られる効果などは同じです。
ゾニサミドのパーキンソン病に対する通常の開始用量は1日1回25mgですが、ウェアリングオフの改善には1日50mgを使用します。 ゾニサミドはレボドパ作用増強剤なので単体で使用するのではなく、レボドパをすでに服用している時に補助的に服用するのが一般的です。
ゾニサミドは1日1回の服用で効果が持続するのが特徴で、服薬の手間を減らせたり、飲み忘れのリスクを減らしたりする点がメリットです。 ただし、薬剤の血中濃度を一定に保つためにも、毎日できるだけ同じ時間に飲むようにしてください。
また、パーキンソン治療におけるゾニサミド製剤はすべてOD錠なので、水がない場面でも飲むこともできます。
ゾニサミドの副作用
パーキンソン病の治療薬としてのゾニサミドは低用量で使用することが多いので、比較的副作用は少ないとされています。 しかしながら、抗てんかん薬としての性質を持っているため、その作用に起因する副作用が出ることもあるので注意が必要です。
ゾニサミドの主な副作用は眠気やふらつき、食欲不振、吐き気などです。 眠気やふらつきは服用開始時や用量を増やした際にあらわれやすいと言われ、高齢者においてはふらつきによる転倒リスクが高まるため、日常生活に注意が必要です。 また、注意力や反射運動能力などの低下があらわれる危険性があるので、乗り物の運転や危険な作業は行わないでください。
食欲不振や吐き気などの消化器症状は比較的軽いものが多いですが、長期間続くと体重減少などに繋がる恐れがあるため注意しましょう。 そして、ごく稀に悪性症候群や中毒性表皮壊死融解症、再生不良性貧血、横紋筋融解症、尿路結石といった重い副作用が起こることがあるので、服用中に気になる症状があらわれた時には医師や薬剤師に相談してください。
ゾニサミドの禁忌・飲み合わせ
ゾニサミドは過敏症の方と妊婦、新生児の使用は禁止で、重い肝機能障害がある方や高齢者、小児は注意して使用する必要があります。 さらに母乳中への移行が報告されていることから、ゾニサミド服用中は授乳しないことが望ましいとされています。
飲み合わせに関しては注意を必要とする薬剤が多く、一例をあげると抗てんかん薬や抗うつ薬など中枢神経系に作用する薬剤との併用では血中濃度が上昇したり、高血圧やてんかんを起こしたりする可能性があるため気をつけてください。 このようなことからもゾニサミドと他の薬剤を併用したい時には必ず医師に相談しましょう。
ゾニサミド以外のパーキンソン病治療薬
パーキンソン病の治療では症状や進行度に応じて複数の薬剤が使い分けられますが、中心となるのはレボドパです。 レボドパは体内でドパミンに変換されて不足した神経伝達物質を補う働きがあり、効果も高い薬剤ですが、長期使用によりウェアリングオフなどの問題を生じることがあります。
このような時にレボドパと併用されることがあるのが、これまで紹介してきたゾニサミドですが、ゾニサミドの他にもMAO-B阻害薬やドパミンアゴニスト、COMT阻害薬などの薬剤が処方されることがあります。
MAO-B阻害薬はドパミンの分解を抑えることで効果の持続時間を延ばして、オン・オフ現象を緩和する作用がある薬剤です。 ドパミンアゴニストはドパミンの受容体に直接作用してドパミンと同様の効果を発揮する薬剤で、レボドパよりも早期から使用されることもあります。 COMT阻害薬はレボドパの分解を抑えて体内での有効成分の持続時間を延ばし、効き目を安定化するレボドパをサポートする薬剤です。
これらの薬剤は単独または併用して使用され、それぞれの患者さんの症状や体質に合わせて選択されます。
ゾニサミドはパーキンソン病治療薬レボドパの補助薬
ゾニサミドはパーキンソン病に対する補助的な治療薬として使用され、ドパミンの働きを多面的にサポートする薬剤です。 レボドパとの併用で主に運動症状の改善が期待できますが、使用にあたっては副作用や併用薬との相互作用に注意が必要です。
パーキンソン病の治療の選択肢は多岐にわたるため、医師と相談しながら適切な治療を継続することが大切といえるでしょう。