「水痘・帯状疱疹ってどんな病気なの?」 「水痘ワクチンの特徴は?」 このような疑問を持っている人は少なくないのではないでしょうか。
本記事では、ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹について徹底解説。 水痘ワクチンの効果や接種スケジュール、注意点も紹介します。
本記事を読めば、水痘・帯状疱疹やワクチンについて理解を深められます。 興味がある人はぜひ最後までご覧ください。
ワクチンが対象とする病原体
ワクチンが対象としている病原体は、主に細菌とウイルスです。 それぞれ以下のような特徴を有しています。
| 分類 | 細菌 | ウイルス |
|---|---|---|
| 形態 | リボソームを持つ単細胞生物 | 核酸がカプシドに包まれた構造物 |
| 大きさ | 約1μm | 20~300nm |
| 細胞壁 | あり | なし |
| 自己増殖能 | あり | なし |
細菌には、遺伝情報を伝えるための「核酸(DNAやRNA)」の他に、細胞小器官である「リボソーム」が存在します。 リボソームの働きはタンパク質の合成です。 一方、ウイルスに細胞小器官はなく、「カプシド」というタンパク質の殻が核酸を包んでいます。
細菌とウイルスの大きな違いは自己増殖能の有無です。 一部を除き、細菌は自分自身の力で増殖できます。 一方、ウイルスが増殖するためには宿主となる細胞を利用しなければなりません。
ヘルペスウイルスとは?
本記事で取り上げる水痘は、ヘルペスウイルスの一種に感染することで発症します。 ヘルペスウイルスは、核酸がDNAでありエンベロープを有しているという特徴を持つウイルスです。 以下の9タイプが知られており、それぞれ異なる疾患を引き起こします。
| 学名 | 一般名 | 初発による疾患 | 再発による疾患 |
|---|---|---|---|
| HHV-1 | 単純ヘルペスウイルス1型 (HSV-1) |
・口唇ヘルペス ・ヘルペス性歯肉口内炎 ・性器ヘルペス ・角膜ヘルペス |
・口唇ヘルペス ・角膜ヘルペス ・Bell麻痺 |
| HHV-2 | 単純ヘルペスウイルス2型 (HSV-2) |
・性器ヘルペス ・口唇ヘルペス |
・性器ヘルペス |
| HHV-3 | 水痘帯状疱疹ウイルス (VZV) | ・水痘 |
・帯状疱疹 ・Ramsay Hunt症候群 |
| HHV-4 | EBウイルス (EBV) | ・伝染性単核球症 | なし |
| HHV-5 | サイトメガロウイルス (CMV) |
・巨細胞封入体症 ・CMV単核症 |
なし |
| HHV-6A | なし | 不明 | |
| HHV-6B | なし | 突発性発疹 | なし |
| HHV-7 | なし | 突発性発疹 | なし |
| HHV-8 | Kaposi肉腫関連ヘルペスウイルス (KSHV) | 感染症は引き起こさない |
水痘は、HHV-3である水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)によって引き起こされます。
水痘とは?
水痘は、水痘帯状疱疹ウイルスへの初感染により引き起こされる疾患です。 2?8歳の小児に好発し、一般的には「水ぼうそう」とも呼ばれています。
水痘について、以下の観点から解説していきます。
- 経過
- 合併症
- 治療
それぞれについて見ていきましょう。
経過
水痘の代表的な経過は以下の通りです。
| 時期 | 症状・特徴 | 日数 |
|---|---|---|
| 潜伏期 | 水痘帯状疱疹ウイルスが空気感染(飛沫核感染)する | -14~0日 |
| 急性期(前半) | 発熱とともに痒みを伴う紅斑が生じる | 0~3日 |
| 急性期(後半) | 発疹が顔面・体幹→四肢末端へと広がっていき、紅斑だけでなく水疱・痂皮が混在する。 発熱は次第に治まる。 |
3~7日 |
| 回復期 | 発疹が痂皮化して治癒する。 園児・学童は全水疱が痂皮化するまで登校不可。 |
7日~ |
合併症
水痘の合併症として重要であるのは以下の通りです。
| 水痘髄膜脳炎 | 成人での初感染や免疫不全者で起こり得る。 発熱・頭痛・嘔吐などの症状が生じる。 |
|---|---|
| 急性小脳失調症 | 水痘帯状疱疹ウイルスへの感染やワクチン接種後に起こり得る。 小脳に限局した炎症が発生し、歩行障害などの症状が生じる。 |
| 肺炎 | 成人での初感染や免疫不全者で重症化すると起こり得る。 |
| 先天性水痘症候群 | 妊娠初期に初感染すると起こり得る。 胎児の催奇形性因子になる。 |
治療
水痘の治療は、アセトアミノフェンや抗ヒスタミン薬などによる対症療法が原則です。 免疫能が低下している患者さんでは、アシクロビルやバラシクロビルなどの抗ヘルペスウイルス薬を用います。
水痘の治療で注意すべきであるのが、罹患児へのアスピリン投与によるReye(ライ)症候群です。 主に以下のような症状がみられます。
- 嘔吐
- 意識障害
- 高アンモニア血症
- 低血糖
なお、同様の理由でインフルエンザ罹患児へのアスピリン投与も、原則として禁じられています。
帯状疱疹とは?
- 参考サイト
- 帯状疱疹ワクチンのご案内|ヒロクリニック
帯状疱疹とは、水痘帯状疱疹ウイルスの回帰発症により起こる感染症です。 以下の観点から解説していきます。
- 原因
- 症状
- Ramsay Hunt症候群
- 治療
それぞれについて見ていきましょう。
原因
小児期に水痘に感染すると、治癒した後も水痘帯状疱疹ウイルスは神経細胞に潜伏し続けます。 そして、以下のような原因により免疫能が低下すると、水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化して帯状疱疹を発症します。
- 加齢
- HIV感染
- 疲労・ストレス
- 悪性腫瘍
- 長期間のステロイド療法
HIV感染や疲労・ストレスなどを原因とする、20歳代の発症も少なくありません。
症状
帯状疱疹の主な症状は、神経の支配領域に沿った片側性・帯状の発疹です。 発疹は体幹・顔面に発生することが多く、水疱・痂皮へと変化した後、約2?3週間で治癒します。 また、しばしば激しい痛みを伴います。
50歳以上の方が帯状疱疹を発症すると、治癒後も痛みが残るケースが少なくありません。 この症状を帯状疱疹後神経痛と呼び、神経が不可逆的に変性することで生じると考えられています。
Ramsay Hunt症候群
顔面の筋肉を支配している顔面神経で水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化すると、Ramsay Hunt症候群が起こります。 顔面神経や、その付近を走行している内耳神経を障害することで、以下のような症状をきたします。
- 顔面筋の運動障害
- 外耳道・耳介の疱疹
- 難聴
- めまい
Ramsay Hunt症候群は比較的予後不良の症候群であり、治療しても後遺症が残りやすいと報告されています。
治療
帯状疱疹の治療では、主に以下の薬剤が用いられています。
| 水痘帯状疱疹ウイルスの活動抑制 |
・アシクロビル ・バラシクロビル ・ファムシクロビル ・アメナメビル |
|---|---|
| 急性期の疼痛治療 |
・アセトアミノフェン ・NSAIDs ・ステロイド |
| 帯状疱疹後神経痛の治療 |
・プレガバリン ・三環系抗うつ薬 ・オピオイド ・ノイロトロピン |
合併症を予防するためにも、治療はできるだけ発症早期から開始します。 また、Ramsay Hunt症候群の治療には、抗ヘルペスウイルス薬(水痘帯状疱疹ウイルスの活動抑制薬)やステロイドが用いられます。
水痘ワクチンとは?
水痘ワクチンについて以下の観点から解説していきます。
- 種類
- 効果
- スケジュール
- 副反応
- 接種を受けられない/注意が必要な人
それぞれについて見ていきましょう。
種類
私たちが接種しているワクチンは、主に以下の2種類に分類されます。
| 分類 | 弱毒生ワクチン | 不活化ワクチン |
|---|---|---|
| 概要 | 様々な方法で病原体の病原性を弱めたもの(感染性あり) | 病原体を殺菌もしくは不活化し、感染性をなくしたもの |
| 獲得する免疫のタイプ | 液性免疫+細胞性免疫 | 液性免疫 |
| 対象となる主な疾患/病原体 |
・麻疹 ・風疹 ・結核 ・水痘 ・黄熱 ・流行性耳下腺炎 ・ロタウイルス感染症 |
・百日咳 ・肺炎球菌 ・日本脳炎 ・ポリオ ・インフルエンザ菌血清型b(Hib) ・ヒトパピローマウイルス(HPV) ・インフルエンザウイルス ・A型肝炎 ・B型肝炎 ・狂犬病 ・髄膜炎菌 ・RSウイルス |
| メリット | 液性免疫と細胞性免疫の両者を獲得できるため、免疫が長期間続く | 感染性がないため、安全性が高い |
| デメリット | 不活化ワクチンと比較すると副反応を起こす可能性が高く、免疫不全患者や妊婦への接種は禁止 | 細胞性免疫を獲得できず、免疫能の持続が比較的短期間であるため、追加接種が必要 |
上表の通り、水痘ワクチンは弱毒生ワクチンに該当します。 そのため、免疫は比較的長期間続きますが、安全性には十分に注意が必要です。
効果
!
水痘ワクチンを1回接種すると、水痘の重症化をほぼ100%予防できます。 また、水痘ワクチンを2回接種することで軽症の水痘も予防可能です。 以上の効果を得られるため、水痘ワクチンは積極的に接種しましょう。
スケジュール
水痘ワクチンの接種スケジュールは以下の通りです。
| 1回目 | 生後12~15ヵ月 |
|---|---|
| 2回目 | 1回目摂取後6~12ヵ月 |
副反応
前述の通り、水痘ワクチンは弱毒生ワクチンであるため比較的副反応がみられます。 稀ではありますが、以下のような重い副反応が起こり得ます。
- アナフィラキシー
- 急性血小板減少性紫斑病
その他、以下のような副反応がしばしばみられます。
| 過敏症 | 発疹や蕁麻疹、痒みなど |
|---|---|
| 全身症状 | 一過性の発熱など |
| 局所症状 | 発赤や腫脹など |
接種を受けられない/注意が必要な人
以下に該当する人は、水痘ワクチンの接種を受けられない/注意が必要です。
| 接種を受けられない人 |
・水痘ワクチンでアナフィラキシーを起こしたことがある方 ・免疫不全患者 ・免疫抑制効果のある治療を受けている方 ・妊娠していることが明らかな方 ・発熱している方 ・重篤な急性疾患の方 |
|---|---|
| 接種に注意が必要な人 |
・心臓、腎臓、肝臓、血液の病気や発育障害がある方 ・これまでワクチン(水痘ワクチン以外)を接種した際に、2日以内に発熱や全身の発疹などのアレルギー症状があった方 ・けいれんを起こしたことがある方 ・近親者に先天性免疫不全症の方がいる方 ・水痘ワクチンの成分でアレルギーを起こすおそれのある方 |
まとめ:水痘ワクチンで水痘の発症を予防しよう
水痘帯状疱疹ウイルスはヘルペスウイルスの一種であり、水痘の原因となる病原体です。 初感染後も神経細胞に潜伏し続け、帯状疱疹やRamsay Hunt症候群を引き起こします。
水痘の発症を予防するためには、弱毒生ワクチンである水痘ワクチンの接種が効果的です。 スケジュールや副反応などを踏まえて、水痘ワクチンを接種しましょう。