便秘薬を日常的に使用していると、毎日飲み続けてよいのか不安に感じることがあるかもしれません。 市販の便秘薬には様々な種類があり、たとえば酸化マグネシウムやコーラックといった商品はどちらも比較的よく使われる薬ですが、実は作用の仕方や身体への影響は大きく異なるのはご存知でしょうか。
また、便秘そのものについても、ただ排便の回数が少ないだけでなく、出にくさや残便感などといった様々な不快感も関係してきます。 こうした状態を改善するために便秘薬を使うことは有効な手段ですが、種類や使い方を間違えると、思わぬ副作用や体調不良に繋がることもあります。
そこで今回は便秘薬を毎日使うことによる影響やリスク、薬剤ごとの特徴や選び方、さらに薬に頼りすぎないための生活習慣の工夫について解説していきます。 安全に健やかな排便習慣を整えるための参考にしてください。
毎日出なくても便秘とは限らない?便秘の正しい判断基準
便秘薬を習慣的に使用している人のなかには、排便の間隔が空いた日には必ず薬を使うというケースも少なくないかもしれません。 排便が1日でもないと身体に悪いと思ったり、不安になったりするためかもしれませんが、実は毎日出なくても便秘に該当するとは限らないのです。
便秘の定義とは
日本で定められているガイドラインでは、排便の頻度が週に3回未満であったり、排便時に強くいきむ、残便感がある、便が硬いといった症状があったりする状態を便秘としています。 つまり、毎日出ていなくても本人が苦痛を感じていなければ便秘でない可能性があり、反対に毎日便が出ていても便が細い、残った感じがあるなどの不快症状があれば便秘であるといえるのです。
また、便秘は環境の変化やストレスなどによる一時的なものだけでなく、数週間から数ヵ月にわたって続く慢性便秘症と呼ばれる症状もあります。 慢性便秘症は生活習慣や食事、加齢、ストレス、腸の動きの低下など、様々な要因が複雑に絡み合って起こるため、単に薬剤で解消しようとしても根本的な改善には繋がらない場合があります。
そのため、便秘薬に頼るだけでなく、排便の頻度や便の状態、排便後の感覚なども含めて、自分の腸のリズムを見直してみることが便秘改善の第一歩となります。
便秘のチェックリスト
自分が本当に便秘かどうかを確認するためにも、次のチェックリストを活用してみましょう。
- 排便の回数が週に2回以下である
- 排便時に強くいきむことが多い
- 便が硬く、コロコロしていることが多い
- 排便後も残っている感じがある
- ガスがたまりやすく、お腹が張る
- 便意を感じにくい、または我慢してしまうことがある
- ストレスや旅行などで便通が乱れやすい
- 食事や水分量が不規則になりがち
- 慢性的に下剤を使用している
チェックリストに多く当てはまるほど便秘の可能性が高く、生活習慣の見直しや便通を整えるための対策が必要です。
便秘薬の種類と特徴
- 参考サイト
- 便秘外来|おだぎ内視鏡・消化器内科クリニック
便秘薬には様々な種類があり、それぞれ作用の仕方や使い方、注意点が異なります。 どれも似たように思えるかもしれませんが、成分や働きの違いを理解することで自分の体質や便秘のタイプに合った薬剤が選べるようになります。
ここでは市販薬で代表的な便秘薬である塩類下剤・刺激性下剤・漢方系便秘薬の3つについて解説していきます。
塩類下剤:酸化マグネシウムなど
塩類下剤は水分を腸内に引き込むことで便をやわらかくし、自然な排便を促す作用のある非刺激性の便秘薬です。 酸化マグネシウムを主成分とした便秘薬は塩類下剤に分類され、即効性はそれほどありませんが、比較的穏やかに作用することから長期間でも使いやすいといわれています。
ただし、腎機能に問題があったり大量に服用し続けたりすると、血中のマグネシウム濃度が高くなり、高マグネシウム血症を引き起こすおそれがあります。 そのため、副作用の出やすい高齢者や持病のある方は、継続的に使用する前に医師や薬剤師に相談することが大切です。
刺激性下剤:コーラックなど
刺激性下剤は腸の粘膜を刺激してぜん動運動を強め、比較的すぐに排便の効果が出るタイプの便秘薬です。 コーラックに代表されるこのタイプの便秘薬は、即効性が高いため急ぎの時に便利ですが、日常的に使い続けるのには注意が必要です。
服用を続けることで、刺激に慣れて腸が自力で動かなくなり、薬剤がないと排便できなくなる依存や大腸メラノーシスと呼ばれる腸の黒ずみが見られることもあります。 このようなことからも、毎日の連続使用はできるだけ避け、必要な時だけ使うのが望ましいとされています。
漢方系便秘薬:タケダ漢方便秘薬など
植物由来の成分を含む漢方薬のなかにも、便秘の改善を目的としたものがあります。 一般的なものとして大黄などが配合された製剤があり、腸を刺激して便を排出させる作用を持っています。
漢方は体に優しいイメージがあるかもしれませんが、大黄に含まれるセンナは刺激性下剤の代表的な成分であることから、長く服用すると依存などを引き起こす可能性があります。 このように漢方便秘薬も刺激性下剤と同じような副作用を引き起こす恐れがあることから、自然派という理由だけで毎日使い続けるのは避けた方がよいでしょう。
ここまで解説してきたように便秘薬を安全に使用するためには、見た目や名前だけで判断するのではなく、それぞれの仕組みや特徴をよく理解することが大切です。 毎日飲むことが前提の便秘薬なのか、それとも一時的な対処薬なのかを見極めたうえで、自分に合ったものを選ぶようにしましょう。
便秘薬を毎日飲み続けた時に起こる可能性がある身体の変化
便秘薬を長期間にわたって毎日使用すると、薬の種類によっては思わぬ健康リスクを招くことがあります。 便秘薬は市販でも手に入って使いやすい反面、使い方を誤ると身体に負担がかかるため、継続使用におけるリスクを理解しておくことが大切です。
酸化マグネシウムによるマグネシウムの蓄積
酸化マグネシウムは比較的安全性が高いとされる便秘薬ですが、毎日服用する場合には注意が必要です。 酸化マグネシウムの服用が続くと、腸から吸収されたマグネシウムが血中に蓄積して高マグネシウム血症を引き起こす可能性があります。
高マグネシウム血症になると吐き気、倦怠感、筋力の低下、血圧の低下、不整脈などの症状があらわれ、重症化すると意識混濁や心停止などが起きて命に関わることがあります。
高マグネシウム血症は大量に酸化マグネシウムを摂取した時や、腎機能が低下してマグネシウムの排出がうまくできない時に起こるため、特に腎機能が低下する病気を抱えている方や高齢者の使用には注意が必要です。
刺激性下剤による腸の機能低下と大腸メラノーシス
刺激性下剤は腸を直接刺激することで排便を促す即効性の高い薬剤ですが、常用すると腸が刺激に慣れて自力で動かなくなってしまうことがあります。 すると便秘薬なしでは排便できなくなり、また薬を使う...という悪循環に陥るリスクがあります。
さらに刺激性下剤を長期使用した人の大腸内視鏡検査では、腸の粘膜が黒ずんで見える大腸メラノーシスがみられることがあります。 大腸メラノーシスは色素が腸に沈着した状態であり、何か症状を引き起こすわけではありませんが、腸に長期間の負荷がかかっているサインであると考えられています。
身体が慣れることによる薬効の低下
便秘薬を使い続けると身体が薬剤に慣れてしまい、同じ量では効果を感じにくくなることがあります。
特に刺激性下剤でこの傾向が強く、最初は1錠で効いていたのに薬剤の量を増やさないと排便できないといった状況に陥ることがあります。 このような状態になると便秘薬が便秘の原因となってしまい、さらなる悪化を招く可能性もあるため注意が必要です。
便秘薬は正しく使えば便通をサポートしてくれる便利な存在ですが、強い薬剤を使い続けることはかえって腸に悪影響を及ぼしかねません。 そのため、便秘薬を使用する時には薬剤の性質をよく理解し、用法用量を正しく守って必要以上に使い過ぎないことが大切です。
便秘じゃないのに便秘薬を飲んだらどうなる?
排便の間隔が少しあいただけで不安になり、本来は必要のないタイミングで便秘薬を使ってしまいたくなる方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、腸の動きが保たれている状態で便秘薬を使うと腸にとっては過剰な刺激となり、逆にリズムが乱れてしまうことがあるので注意が必要です。
たとえば、1日排便がなかっただけで薬剤を服用したくなるかもしれませんが、お腹の張りや不調を感じなければ、2?3日周期の排便でも問題はありません。 ここで無理に便秘薬で排便を起こすことが習慣になると、腸が本来のリズムを失い、次第に薬がないと出せない体質へと変わってしまうリスクもあります。
また、便意を感じる前に薬剤を使うと、本来排便のタイミングではない状態で腸が無理に動かされ、腹痛や下痢といった不快症状に繋がる恐れも考えられます。 このように便秘ではないのに便秘薬を飲むことは、腸にとってメリットがないばかりか、様々なデメリットを引き起こしてしまいます。
便秘ではないけど腸の調子を整えたいのであれば、便秘薬ではなく整腸剤を使うとよいでしょう。 整腸剤は主に乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を補給して腸内環境を整える作用がある薬で、毎日飲んでも常用性はなく、飲み続けることで下痢・便秘・腹部膨満などの消化器症状の改善が期待できます。
便秘で辛い時には便秘薬を使用し、便秘ではない時には整腸剤で腸内環境を整えていくといった使い分けが大切といえるでしょう。
便秘薬の選び方
便秘薬は種類も作用も様々で、どれを選べばよいのか迷う人も多いかもしれません。 しかしながら、選び方を間違えると便秘の悪化や副作用を引き起こすおそれがあるため、自分の体質や目的に合った薬剤を見極めることが大切です。
用途に応じて選ぶ
これまでお話してきた通り、便秘薬には即効性を求めるものと継続的な便通のサポートを目的としたものがあります。
例えば、旅行時などの一時的な便秘には刺激性下剤が役立つ場合もありますが、毎日の使用には向きません。 日々の排便リズムを整える目的であれば、穏やかに作用する塩類下剤の方が適しているといえるでしょう。
薬の強さや刺激性に注意
市販薬のパッケージには「〇時間で効果」などの表現が多く見られますが、便秘薬を強さで選んでしまうと、腸に過剰な刺激を与えてしまうことがあります。 そのため、効果の早さ・強さに注目するだけでなく、長く使っても安全であるか、身体への負担が少ないかといった点にも目を向けることが大切です。
特に刺激性下剤は即効性がある反面、腸の働きを弱めてしまうリスクがあるため、毎日の服用には注意が必要です。 一方で刺激が少ないとされる塩類下剤でも、腎機能に問題がある人ではマグネシウムの蓄積による副作用が起こることもあるため、体調や持病に応じた便秘薬を選ぶことが重要です。
便秘薬だけに頼らない毎日の便秘対策
便秘を根本から改善するためには薬剤に頼るだけでなく、日々の生活習慣を整えることが欠かせません。 腸の働きは食事や運動、ストレスの影響を強く受けることから、排便リズムを安定させるためには生活面での対策が重要です。
ここでは、便秘改善に向けた毎日の生活におけるポイントを紹介します。
食事の見直しが腸を整える第一歩
便通を改善するためには、バランスのよい食事を意識することが大切です。
なかでも、便のかさを増やし腸を刺激して動かす不溶性食物繊維と、便に適度な水分を与えてやわらかく保つ水溶性食物繊維を積極的に摂取しましょう。 不溶性食物繊維は豆類や根菜類、きのこなどに多く、水溶性食物繊維は海藻類やこんにゃく、オクラなどのねばねばした野菜に多く含まれています。
また、適度な油分は腸の潤滑剤となり、スムーズな排便に役立ちます。 ダイエットなどでカロリーを気にするあまり、極端に油を控えた食生活が続くと便が硬くなりやすくなるため注意が必要です。 油のなかでもオリーブオイルは腸の蠕動運動を促す効果もあるので、どの油にしようか迷った時には使ってみるとよいでしょう。
これらに加えて、腸内環境を整えるヨーグルトや味噌、納豆などの発酵食品も毎日の食事にプラスすることをおすすめします。
排便のリズムをつくる
排便は習慣によって整いやすい行動の1つであり、毎日同じ時間にトイレに座ることで腸がタイミングに合わせて動きやすくなります。 特に起床後1時間は排便タイムとも呼ばれ、便が出やすい時間帯といわれています。 このタイミングを逃さないためにも、少し早起きしてゆっくりトイレにいく時間を確保することが便秘改善には大切です。
また、便意を我慢することが続くと、直腸が刺激に反応しにくくなり、排便のリズムが崩れてしまいます。 なるべく自然な便意を逃さず、我慢しないで済む習慣をつけることがよい便通に繋がります。
適度な運動も効果的
腸の動きは自律神経の働きに大きく関係しており、体を動かすことは腸の蠕動運動を促進させることに繋がります。 特に腹筋が衰えると便を押し出す力が弱くなって便が出にくくなるため、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を継続することが大切です。
また、深呼吸やストレッチを取り入れたリラックスタイムを意識することで、ストレスによる腸の緊張も和らぎやすくなります。 このように緊張やストレスによる便秘に悩む人にとっては、心身のケアも大切な便秘対策の1つなのです。
規則正しい生活を送る
規則正しい生活を送ることは、本来備わっている人間の身体の働きを促し、自然に回復する力を高めます。 便秘においても規則正しい生活は重要で、十分な睡眠をとることで自律神経が整い、朝食をとることで内臓を刺激して腸の蠕動運動を促進させます。
規則正しい生活は便秘に対する即効性は低いかもしれませんが、食事、運動、睡眠、ストレスケアといった毎日の積み重ねは腸の動きを支える基盤になります。 必要に応じて便秘薬を使いつつも、最終的には自然な排便ができる状態を目指すことが、腸だけでなく全身の健康にも繋がるといえるでしょう。
便秘薬は毎日ではなく必要な時に飲もう
便秘薬には様々な種類があり、依存性や副作用が異なります。 酸化マグネシウムのように比較的安全な薬もあれば、刺激性下剤のように毎日の使用によって腸の働きを弱めるリスクがある薬もあります。 しかしながら、どの薬も使い方を誤れば身体に負担となる可能性があるため、目的や体質に応じて選択していくことが大切です。
また、便秘の根本改善には生活習慣の見直しが欠かせません。 食事・運動・排便リズムなど、日々の積み重ねによって腸の調子は大きく変わります。 便秘薬はあくまで補助的に使い、自然な排便を促せる身体づくりを目指すことが、長期的な健康に繋がるといえるでしょう。