おたふくかぜは子どもがかかりやすい病気として知られていますが、感染すると耳下腺の腫れや発熱だけでなく、まれに難聴や髄膜炎など重い合併症を引き起こすことがあります。 そのため、感染を避けるためのワクチン接種が推奨されていますが、ワクチンの副反応への不安によって接種をためらう人も少なくありません。
接種後の副反応による発熱や無菌性髄膜炎など重い副反応もありますが、ワクチン接種を受けずに感染すると重い合併症を引き起こす恐れが高くなります。 これらリスクについて正しく理解することは、接種を受けるべきか迷った時の接種の判断基準となります。
今回はおたふくかぜの感染リスクとおたふくかぜワクチン接種の意義、副反応の症状やあらわれる時期、任意接種における助成制度などを交えて解説します。 おたふくかぜワクチンについて理解を深めたい方は参考にしてください。
おたふくかぜワクチンの副反応について
おたふくかぜワクチンは感染症の重症化を防ぐ有効な手段ですが、接種を検討する際には副反応のリスクも併せて理解しておく必要があります。 多くは軽度な症状で済むものの、ごく稀に重い副作用の報告があるのも事実だからです。
おたふくかぜワクチンは毒性を弱めたウイルスを使った生ワクチンであるため、ワクチンを打った後の副反応では感染した時のような症状があらわれることがあります。
おたふくかぜワクチンでよく見られる副反応には、接種から10~14日頃に耳下腺や頬の腫れ、微熱などがあり、接種から3週間前後には接種4万回に1回程度の割合で無菌性髄膜炎が発生する可能性があるとされています。 また、ごく稀に精巣炎や卵巣炎、難聴などが起こることがあるともいわれています。
軽い副反応であれば数日から1週間程度で回復するケースがほとんどですが、発熱が長引く場合や、高熱と強い頭痛、嘔吐を伴う場合には無菌性髄膜炎などの重い合併症を引き起こしている可能性があるため注意が必要です。 無菌性髄膜炎はウイルスが脳や脊髄を包む髄膜に炎症を起こし、発熱、激しい頭痛、嘔吐などがあらわれる病気であり、放置すると後遺症のリスクが高まります。
そのほかに、皮下出血やあざができやすくなる血小板減少性紫斑病が報告されており、頻度は数十万人に1人程度と極めて低いものの、接種後に原因不明の出血やあざが出た場合には速やかに医療機関を受診してください。
また、極めて稀ではあるものの、接種後に難聴が発症した例が報告されたことがあります。 ただし、自然感染によるおたふくかぜが引き起こす難聴と比較するとその頻度は大幅に低いとされています。
これらの重い副作用は極めてまれであり、現在使用されているワクチンは過去のものよりも安全性が高いとされていますが、重篤な副反応が絶対に起きないとは言い切れません。 おたふくかぜワクチンの副作用は接種直後だけでなく、数週間経ってからあらわれることがあるので、体調変化に注意を払うことがワクチンの副反応による重症化を防ぐために重要といえます。
おたふくかぜとは
おたふくかぜはムンプスウイルスによる感染症で、耳下腺の腫れや発熱が特徴の感染症です。 子どもに多い病気ですが、年齢が高くなるほど重い合併症を起こしやすく、場合によっては後遺症が残ることもあります。
ここではおたふくかぜの症状や流行しやすい時期や年齢層、感染による具体的なリスクについて解説していきます。
おたふくかぜの症状と合併症
おたふくかぜの潜伏期間は約2?3週間とされ、発症すると耳下腺が腫れて痛みが出て、発熱を伴います。 耳下腺は片側だけが腫れることもありますが、数日のうちに両側に広がるケースが多いとされています。
腫れが始まる1?2日前から発熱や倦怠感などの症状があらわれるものの、腫れなどの症状は1?2週間ほどで落ち着くのが一般的です。 そして、約3割の方は感染しても症状が出ずに自然治癒していくともいわれています。
このように、おたふくかぜは自然に回復することがほとんどですが、無菌性髄膜炎をはじめとする合併症を引き起こしやすい感染症であるため、発熱や嘔吐、頭痛などが長引く場合には重症化を防ぐためにも医療機関を受診してください。 重症化することは稀とはいえ、髄膜脳炎に発展し治療が遅れると神経機能に重大な影響を及ぼすことがあります。
さらに深刻なのが、思春期以降の発症に伴う精巣炎や卵巣炎です。 男性では約25%が精巣炎を発症し、両側に起こった場合には不妊の原因となる可能性が指摘されています。 女性でも約7%が卵巣炎を発症するとされ、妊娠初期に感染すると流産を引き起こす危険性があるため注意が必要です。
これらに加えて、頻度は高くありませんが、ムンプス難聴と呼ばれる内耳障害による感音性難聴が後遺症として残ることがあります。 厚生労働省の資料では感音性難聴は0.1?0.25%の発症率とされていますが、一度発症すると回復が難しいことから、重篤な後遺症として位置づけられています。
これらの合併症は乳幼児期よりも年齢が高くなるほど発症リスクが増す傾向があることから、おたふくかぜは子どもだけが気を付ければよい病気ではありません。 特に思春期以降では症状が重なって入院が必要になることも珍しくないため、おたふくかぜを軽い病気と思わず、合併症リスクまでを正しく理解しておくことが重要です。
おたふくかぜの流行時期と出席停止
おたふくかぜは年間を通して発生しますが、特に春から初夏にかけて患者数が増える傾向があります。 幼稚園や小学校など集団生活を送る場では、ひとたび流行が始まると短期間で多くの子どもに広がることが少なくありません。
主な感染経路は飛沫感染や接触感染であり、兄弟や保護者など家庭内での二次感染も起こりやすいため注意が必要です。 感染力は発症の1?2日前から高まり、耳下腺が腫れ始めてから5日程度は特に周囲への感染リスクが高いとされています。
学校保健安全法では、おたふくかぜにかかった子どもは耳下腺、顎下腺、舌下腺などの腫れが始まった日から少なくとも5日間、かつ全身状態が良好になるまで出席停止と定められています。 この時、腫れが始まった日を0日として数え始めるので、間違えないよう気をつけてください。 また、腫れが始まった日から5日経過したとしても、発熱や頭痛などの症状が残っている場合には欠席しましょう。
大人には出席停止が定められているわけではありませんが、子どもと同様に周囲への感染を防ぐためにも同じ期間だけ休むことが推奨されます。 家庭内でも高齢者や持病を持っている方にうつさないよう、接触しない工夫をし、タオルの共有を避けるなどの感染拡大を防ぐ対策を行いましょう。
おたふくかぜにかかりやすい年齢
おたふくかぜは主に1歳から小学校低学年にかけて発症しやすく、感染者の6割が3?6歳の子どもであることから、集団生活を始める幼児期から学童期にかけて患者さんが急増します。 一度感染すると生涯免疫ができるので二度感染することはほとんどないとされていますが、ごく稀に再度感染することがあるとされています。
しかしながら、大人でも感染する病気であり、年齢が高くなるほど発症時の症状や合併症が重くなる傾向があります。 精巣炎や卵巣炎などのリスクも高いことから、おたふくかぜワクチンで免疫をつけることが重要と考えられています。
おたふくかぜワクチンを接種する意味
おたふくかぜは自然に治癒する病気でもありますが、難聴や不妊など重い合併症を引き起こす可能性があるため、免疫をつけるワクチン接種を検討することが大切です。 感染そのもののリスクとワクチンの副反応の両面を理解したうえで、接種の意義を考える必要があります。
予防効果と接種後も発症する可能性
おたふくかぜワクチンは生ワクチンであり、1回接種で約8割、2回接種で約9割が抗体を獲得するとされています。 おたふくかぜワクチンを接種しても発症を完全に防ぐことはできませんが、接種していない場合と比べると発症率は大幅に低下します。 また、仮に感染したとしてもワクチンを接種してある場合は、耳下腺の腫れや発熱が軽度で済むことが多く、無菌性髄膜炎や難聴など重い合併症のリスクも減ると報告されています。
ただし、おたふくかぜワクチンは接種から時間が経過することで免疫が低下し、思春期や成人になってから再感染するケースもあると考えられています。 そのため、1歳で1回目を接種し、5?6歳までに2回目を接種することを推奨しています。
ただし、おたふくかぜワクチンは日本国内では任意接種であるため、自治体が公費助成をしていない場合には費用を負担しなければなりません。
おたふくかぜワクチンは受けるべきか
おたふくかぜワクチンの接種は任意であり、法律で義務づけられているものではないため、接種を見送る方がいるのも事実です。 ただし、日本のおたふくかぜワクチン接種率は40%と低く、免疫がある人が少ないことから、身近に感染者が出ると一気に流行する可能性があるので注意が必要です。
自然感染で免疫を獲得することを選ぶ人もいますが、難聴や精巣炎、卵巣炎といった重い合併症は一度発症すると後遺症が残る可能性があるため、医療機関ではワクチン接種で免疫を獲得することを呼びかけています。
一方でワクチンにも副反応があり、発熱や耳下腺の腫れといった軽いものが多いものの、無菌性髄膜炎など重い副反応が報告されることもあります。
接種するかどうかを判断する際には感染時の合併症とワクチンの副反応を比較し、どちらのリスクをより大きいと考えるかが重要です。 医学的には重い後遺症を避ける観点から接種が推奨される傾向がありますが、最終的な判断は最新の情報を確認し、かかりつけ医と相談したうえで行うことが望ましいといえます。
おたふくかぜワクチンの2回目接種の必要性
おたふくかぜワクチンは1回接種でも一定の予防効果がありますが、長期的な免疫維持には不十分とされています。 1回の接種で約8割の抗体が獲得でき、その効果は10年以上あるといわれていますが、接種から時間が経つにつれて効果は低下していきます。
おたふくかぜにかかりやすい幼児から小学生の頃までに十分な免疫をつけておくためにも、ワクチン接種を1回で終わりにせず、2回を接種しておくべきといえるでしょう。
おたふくかぜワクチンは先進国では無料化することが望ましいとWHOが考える予防接種であり、麻疹・風疹・おたふくかぜを組み合わせたMMRワクチンは国際的にも広く使用されています。 日本国内ではMMRワクチンではなく、定期接種である麻疹・風疹のMRワクチンにプラスして、任意接種であるおたふくかぜワクチンを打たなければなりませんが、国際的な流れを踏まえると定期接種とされるべきであるともいえる重要なワクチンなのです。
おたふくかぜワクチンの費用と助成
おたふくかぜワクチンは任意接種なので自己負担する必要がありますが、自治体によっては子どもを対象に接種費用の一部を助成する制度が整っているところもあります。 ここではおたふくかぜワクチンの費用と助成について解説していきます。
おたふくかぜワクチンの費用
おたふくかぜワクチンの接種費用は医療機関によって異なりますが、約3,000 ?8,000円です。 自治体による助成がない場合、これを全額自己負担する必要があるため、2回接種では1万円を超える負担となるケースもあります。
おたふくかぜワクチンの助成制度
おたふくかぜワクチンは任意接種なので基本的に費用は自己負担ですが、自治体によっては助成を行っています。 ただし、助成額や対象年齢、助成回数などはその自治体によって異なる点には注意してください。
例えば、同じ東京都であっても板橋区は3,000円の助成が2回受けられるのに対して、目黒区は3,000円の助成が1回のみです。 対象年齢も板橋区は1回目を1歳の誕生日前日~2歳の誕生日前日まで、2回目を小学校就学前1年間の4/1~3/31と細かく決まっているのに対し、目黒区は1歳以上4歳未満と比較的幅広い設定となっています。
このように自治体によって助成の有無や制度の内容が異なるため、接種前には一度お住まいの自治体の情報の確認をおすすめします。
おたふくかぜワクチン接種を検討すべき人
おたふくかぜワクチンは任意接種ですが、重い合併症のリスクが高い人や、家庭内や職場で感染を広げる可能性が高い人は、接種を前向きに検討する姿勢が大切です。
思春期以降の子ども・成人
最も接種を考えるべきなのは、思春期以降の子どもや大人です。
おたふくかぜは乳幼児期に発症した場合は軽症で済むことが多いですが、年齢が高くなるほど重症化しやすく、精巣炎や卵巣炎、膵炎などの合併症を起こす頻度が高まります。 男性では精巣炎が両側に起こると不妊に繋がる可能性があり、女性では卵巣炎や膵炎により長期的な健康被害が残る場合があります。
それに加え、成人が発症すると高熱や強い耳下腺痛が長引いて、入院が必要となる例も報告されています。
妊娠を希望する女性とそのパートナー
妊娠を希望する女性とそのパートナーも接種を検討するべきです。
妊娠初期におたふくかぜに感染すると流産のリスクが高まるとされ、母体への負担も大きくなります。 男性の場合も、思春期以降の感染で精巣炎が起これば将来の妊娠計画に影響する可能性があります。
将来的に子どもを希望する場合は、重い合併症のリスクを減らす意味で若いうちに免疫を獲得しておくことが重要です。
基礎疾患を持つ人や乳幼児と関わる人
また、基礎疾患を持つ人や家庭内に乳幼児がいる人も注意が必要です。 おたふくかぜは感染力が高く、家庭内で次々に感染が広がることが多いため、家族の中で免疫を獲得している人が多いほど流行を抑えやすくなります。
また、医療機関や保育施設で働く人も患者さんや園児などへの二次感染を防ぐため、接種を検討するとよいでしょう。
おたふくかぜワクチンは副反応と感染リスクを理解して判断を
おたふくかぜは耳下腺の腫れや発熱を主症状とするウイルス感染症で、自然に治癒することが多い一方、無菌性髄膜炎、精巣炎、卵巣炎、膵炎、難聴など重い合併症を引き起こす可能性があります。 特に思春期以降の発症では重症化しやすく、不妊や難聴といった後遺症が残る場合もあります。
おたふくかぜワクチンはこうした重い合併症を防ぐ有効な手段ですが、副反応が起こる可能性があるのも事実です。 多くは接種翌日から数日の間に出る発熱や耳下腺や頬の腫れなどの軽い症状で数日以内に自然に治まりますが、ごく稀に無菌性髄膜炎や血小板減少性紫斑病といった重い副作用が報告されています。
接種を判断する際は、感染時のリスクとワクチンの副反応のリスクを正しく比較することが大切です。 特に思春期以降の子どもや妊娠を希望する人、家庭内に乳幼児がいる人、医療・保育関係者などは感染時の影響が大きいので注意が必要です。
おたふくかぜワクチンに関する最新の情報を確認し、かかりつけ医と相談したうえで、自分や家族にとって最適な選択をしていきましょう。