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エキノコックス症は薬で治せる?症状・検査・駆虫薬による治療と予防のすべて

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エキノコックス症は薬で治せる?症状・検査・駆虫薬による治療と予防のすべて

エキノコックス症は、日本国内では北海道を中心に報告されている寄生虫感染症で、放置すると命に関わる危険がある病気です。 原因はキツネや犬などに寄生するエキノコックス属の寄生虫で、人に感染すると肝臓に小さな袋状の病変を作り、長い年月をかけて広がっていきます。

初期は自覚症状がほとんどなく、健康診断や検査で偶然見つかることも少なくありません。 しかし、進行すると肝機能障害や腹部の不快感、そして重症化すると死亡することもあるため、早期発見と治療が何より重要です。

治療法としては外科手術により病変を取り除く方法のほか、駆虫薬を使って寄生虫の増殖を抑える薬物療法が行われています。 また、人への感染を防ぐためには、犬やキツネに対する定期的な駆虫薬投与、地域での予防活動も欠かせません。

この記事では、エキノコックス症の症状や検査の方法、薬を中心とした治療の流れ、さらに予防のためにできることを整理して解説します。 病気に対する不安を少しでも軽くし、正しい知識を持って備えられるようにしていきましょう。

エキノコックス症とはどんな病気か

エキノコックス症は、寄生虫が人に宿る感染症であり、日本国内では北海道を中心に報告されていますが、世界各地でも問題となっている病気です。 感染しても初期は症状が出にくいため気づかれにくく、発見されたときにはすでに病気が進行しているケースも少なくありません。

寄生虫が身体の中でどのように広がるのか、症状が出るまでにどのくらい時間がかかるのかを知っておくことは、早期発見や予防のために重要です。 ここでは、エキノコックス症の基本的な特徴について解説します。

原因となる寄生虫と感染の広がり方

エキノコックス症の原因には、単包条虫による単包性エキノコックス症と多包条虫による多包性エキノコックス症の2つがあります。 単包条虫による単包性エキノコックス症はアフリカ・ヨーロッパ・アジア・南アフリカ・中東で発生し、羊を飼育する地域で大きな流行がみられています。

一方、多包条虫による多包性エキノコックス症が多いのは北半球で、日本国内でも感染が確認されています。 多包性エキノコックス症はこれまで、北海道東部での感染が多かったのですが、北海道全域へと広まりつつあるとされ、警戒を強めています。

多包性エキノコックス症の原因である多包条虫は、20世紀からの交易や交流を通して、北方領土から伝わってきたとされています。 野ネズミ駆除用のキツネと毛皮に付着していたと考えられる多包条虫は、北海道の離島である礼文島で最初の流行を起こしました。 その後、多包条虫に感染したキツネが北海道東部に人為的に移動させられたことで、エキノコックス症が広まったといわれています。

多包条虫は、成虫で体長が数mm程度の小型の寄生虫で、キツネや犬の腸に寄生して卵を産み、便とともに排泄されて土や草木、水源に広がります。 その卵が人の口に入ることで感染し、体内で幼虫に変化して肝臓を中心に広がっていきます。 ただし、人間の体内では成虫にならないため、卵を産むことはないため、人から人への感染はしません。

このような感染経路のため、北海道ではキツネに触れるリスクが知られており、地域ごとに注意喚起が行われています。 また、犬とのふれあいや山菜・きのこ・沢水を介して卵が体内に入る可能性も指摘されています。

長い潜伏期間と症状の進行

エキノコックス症は感染してからすぐに症状が出るわけではありません。 卵が体内に入り幼虫となると寄生し、肝臓に袋状の病変をつくりながら、数年から十数年かけて少しずつ広がっていきます。

第一期の潜伏期には肝機能は正常ですが、血清検査で陽性が出たり、健康診断や画像検査で偶然に見つかったりすることで、感染に気づきます。 第二期の進行期にも肝機能の異常は出にくいですが、肝腫大によって不快感などの症状が現れ、第三期の完成期にはついに肝機能障害を引き起こし、腹痛や黄疸などの全身症状が出てきます。

このようにエキノコックス症の進行は非常にゆっくりですが、確実に臓器を侵していくため、気づいたときには大きな疾患を引き起こしている危険な感染症なのです。

エキノコックス症の致死率

単包性エキノコックス症と、多包性エキノコックス症では致死率に差があります。 明確な数字は明らかにされていませんが、単包性エキノコックス症の死亡者数は感染者の約2?4%と考えられています。

一方、日本でも発生している多包性エキノコックス症は、放置することで致死率が90%以上と高くなる病気です。 しかしながら、実際の死亡者は中国の西部に集中しているともいわれています。

このように致死率が高い病気であるため、放置せずに、できるだけ早期に治療を始めることが大切です。

エキノコックス症の症状と見つけ方

エキノコックス症は潜伏期間が長いため、感染してもすぐに体調の変化が出ることはほとんどありません。 症状が出るのは寄生虫が肝臓に広がり臓器の働きを妨げるようになってからなので、気づいたときには病気が進んでいるというケースが多くなっています。

ここでは、エキノコックスに感染したときの症状の現れ方や、発見方法について解説します。

エキノコックスの症状の特徴

エキノコックス症で最も多いのは肝機能障害で、進行すると肝臓の機能が落ち、右上腹部の違和感や痛み、身体のだるさが出てきます。 また、肝臓が腫れることでお腹の張りを感じたり、黄疸や発熱がみられることもあります。

さらに、袋状の病変である胞嚢が肺や脳など他の臓器に転移することもあります。 肺に転移すると息切れや胸の痛み、咳といった症状がみられ、脳に転移すると頭痛やけいれん発作、精神機能障害などを引き起こす可能性もあります。

このように病気が進行していくと全身症状が悪化し、命にかかわることも少なくありません。

エキノコックスの診断方法

エキノコックス症は自覚症状が出にくいため、健康診断や人間ドックで行う超音波検査、CT検査などで偶然発見されるケースが多いです。 初期の病変は小さいことから自覚できませんが、画像診断では肝臓に特徴的な陰影が確認されることがあります。

エキノコックス症が疑われる場合には、血液検査を行って多包条虫に対する抗体の有無を確認して診断します。 陽性となった場合には、薬物療法や手術などで症状の進行を抑えていく治療法が一般的です。

また、北海道在住の方は地方自治体において、小学3年生から血液検査を行っています。 北海道以外に住んでいる方は、かかりつけ医を通じて郵便等のやりとりで検査を受けられますので、不安がある場合には一度相談してみましょう。

エキノコックス症は治せるのか

エキノコックス症は放置することで命に関わる病気ですが、適切に対応することで改善や進行抑制が期待できます。 ただし、感染した部位や進行の程度によって治療の方針は異なり、根治するケースと薬で進行抑えるケースに分かれます。

ここでは、手術と薬物療法の両面から治療の可能性について解説していきます。

手術によるエキノコックス症の治療

日本で感染事例の多い多包性エキノコックス症で、最も根治に近づける治療は外科手術です。 手術によって寄生虫による病巣を手術で切り取れれば、体の中から寄生虫を取り除けますが、病気の進行に気づかず病巣が大きく広がりやすい特徴があるため、手術が難しい場合も少なくありません。

病気が進行していたり、手術が難しい場所に病巣ができていたりするケースでは、手術ではなく、薬による治療が選択されます。

薬によるエキノコックス症の治療

手術が難しい場合や手術で病巣の完全な切除ができないときには、駆虫薬を用いた薬物療法が行われます。 エキノコックス症の治療薬として代表的なものにエスカゾールがあり、寄生虫の成長を抑えて病変の進行を止める効果があります。 薬だけで完全に寄生虫を死滅させるのは難しい場合もありますが、長期的に服用することで病気の進行を抑制し、生活の質を保てるとされています。

このように、エキノコックス症はできるだけ早く治療を開始することで、安定した状態を維持しやすい感染症です。 定期検査を受けるのはもちろん、体調に違和感があるときにはできるだけ早く医療機関を受診することが大切といえるでしょう。

エキノコックス症の治療に使われる薬

エキノコックス症において手術が難しい場合や、術後も病巣が残っている可能性があるような場合には、エスカゾールといった駆虫薬を用いて病気の進行を抑えます。 ここではエスカゾールの効果や用法、副作用について確認していきましょう。

エスカゾールの作用・効果

エスカゾールはアルベンダゾールを主成分とし、寄生虫の微小管形成やフマル酸還元酵素などを阻害してグルコースの吸収を妨げる作用があると考えられています。 これによって、寄生虫のエネルギーを不足させて成長を抑制し、病気の進行を遅らせます。

ただし、エスカゾールだけではエキノコックス症を完治するのは難しく、また薬の効果についても個人差があるといわれています。

エスカゾールの用法用量

エスカゾールはアルベンダゾールに換算して1日600mgを3回に分けて食事とともに服用します。 これを28日間連続で服用し、その後14日間の休薬期間を設けます。 飲みにくい場合には、かみ砕いてから飲むことも可能です。

エスカゾールの副作用

エスカゾールの主な副作用は、肝機能異常や吐き気、腹痛、貧血、めまい、頭痛などです。 重篤な副作用の初期症状である可能性もあるため、次の症状が現れたときは注意が必要です。

例えば、鼻血や歯ぐきからの出血、息切れは汎血球減少症、皮膚の水ぶくれや粘膜のただれは皮膚粘膜眼症候群、全身倦怠感や皮膚が黄色くなるのは黄疸や肝機能障害の初期症状かもしれません。 これらの症状がみられたときには、できるだけ早めに医療機関を受診し、医師の診断を受けてください。

エスカゾールの禁忌・飲み合わせ

エスカゾールは過敏性を起こしたある方、妊婦は使用できず、治療中とその後1ヵ月は避妊をしなければなりません。 また、臨床試験を実施していないため、小児には使用しない方が望ましいとされています。

飲み合わせに関しては、エスカゾールの血中濃度を上昇させる可能性があるプラジカンテル、反対に血中濃度を減少させて効果を弱めるおそれがあるリトナビル、フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタールとの併用には注意が必要です。

犬やキツネのエキノコックス症の予防薬

エキノコックス症は犬やキツネの糞を介して、人間へ感染することから、動物側の対策も効果的です。 犬やキツネにはプラジクアンテルという薬をエサに混ぜて定期的に投与して、体内の寄生虫を駆除します。 プラジクアンテルによって犬やキツネの体内の成虫が駆除されれば、卵がまき散らされる量が減少し、人間への感染率を下げる効果があります。

プラジクアンテルの散布はドイツで高い効果を示し、散布前は6割だったキツネの感染率は2割にまで低下しました。 しかしながら、散布を中止した約1年半後にはもとの感染率へ戻るという報告があることから、散布は定期的に行う必要があります。

このような取り組みは北海道でも行われ、感染予防に一役買っています。

日常生活で取り入れたいエキノコックス症予防策

エキノコックス症は、薬や手術によって治療できる病気ですが、感染しないことが最も重要です。 そのため、普段の生活のなかでできる予防の積み重ねが、将来の健康を守ることに繋がります。 特に北海道などの流行地域では、個人の心がけが感染の広がりを防ぐうえで欠かせないといえるでしょう。

普段の生活で気をつけたいこと

家庭で取り入れやすい予防の基本は、口に入るものを清潔にすることです。 動物の糞が混ざっている可能性もあるため、野菜や果物は流水でよく洗ってから食べることが大切です。

山菜やきのこなど自然から採ってきた食材は、一見きれいに見えても寄生虫の卵が付いていることがあります。 エキノコックスの卵は100℃で1分以上煮沸すると死滅するため、必ず加熱して調理し、生では食べないようにしましょう。

また、水の扱いにも注意が必要です。 山の湧き水や沢水は透明で安全そうに見えますが、寄生虫の卵が含まれている可能性があります。 旅行や登山で現地の水をそのまま飲むのは避け、必ず煮沸や浄水器を通してから利用することが推奨されています。

こうした習慣はエキノコックス症だけでなく、他の水系感染症の予防にも役立ちます。

流行地域で注意したい行動

北海道では野生のキツネが身近な存在です。 観光地や市街地にも現れることがありますが、エキノコックスの卵を持っている可能性があるため、直接触れたり餌を与えたりしないことが重要です。 特に子どもは好奇心から動物に近づきやすいため、大人が注意を払う必要があります。

また、キツネの糞を見つけても触れたり持ち帰ったりしてはいけません。 卵は肉眼では見えず、乾燥した状態でも感染力を保つとされています。 ハイキングやキャンプでは、土や草の上に直接食べ物を置かない、手を洗わずに飲食しないなど、基本的な衛生管理を行って感染リスクを減らしましょう。

さらにペットとして犬を連れていく場合についても注意が必要です。 犬が野山で遊んだあと、その体に卵が付着して家庭内に持ち込まれる可能性があります。 帰宅後は犬の足や体を拭いたり洗ったりして清潔を保つことが、家族全体の感染予防に繋がります。 さらに、動物病院で定期的に駆虫薬を投与することは、人への感染を防ぐうえでも大切といえるでしょう。

感染を防ぐために役立つ習慣

日常生活で欠かせないのが、こまめな手洗いといった基本的な衛生管理です。 外から帰ったときや食事の前には石けんと流水で手をしっかり洗うことを基本とし、特に土いじりやアウトドア活動のあとには丁寧な手洗いが必要です。 エキノコックスの卵にはアルコール消毒はほとんど効果がないため、石けんを使った手洗いが大切になります。

食器や調理器具も清潔を保つよう心がけましょう。 まな板や包丁を生鮮食品と加熱済み食品で分けることは、寄生虫だけでなく細菌やウイルス感染を防ぐうえでも有効です。

こうした生活習慣の改善は、家庭内の予防だけでなく、地域全体の感染を減らすことに繋がります。 一人ひとりの小さな行動が、社会全体の安全を守ることに繋がるのです。

エキノコックス症は手術と駆虫薬で治療する

エキノコックス症は、感染しても長い間症状が出にくく、気づいたときには進行していることもある恐ろしい感染症です。 しかし、健康診断や検査で早期に発見して手術や駆虫薬による治療を行えば、改善や進行抑制が期待できます。

さらに、犬やキツネへの定期的な駆虫、食品や水の扱いに注意することなど、日常生活での予防の積み重ねが感染を防ぐ大切な手段となります。 エキノコックス症は私たち一人ひとりが正しい知識を持ち、対策を行うことで感染を防いでいきましょう。

このコラムの執筆者

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稲岡 柚鈴
薬剤師
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2020年に薬剤師としてのキャリアを開始し、臨床を経験。

発症後の治療だけでなく、予防と早期対応の重要性を痛感。

現在は医療系サイトで感染症に関するコラムを執筆中。

旅行を趣味とする中で「健康であってこそ楽しめる時間がある」と実感し、その思いを背景に感染症予防の啓発活動を続けている。

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