胸の中央にある心臓は握りこぶしくらいのサイズで、全身に血液を送り出すポンプの役割を担っている臓器です。
休むことなく働き続ける心臓は、生活習慣や持病の影響を受けて狭心症を発症することがあり、発作による強い胸の痛みが現れます。
狭心症を治療する薬剤には様々種類がありますが、このような発作の応急処置として飲む薬剤の1つに硝酸薬のニトログリセリンがあります。
今回は硝酸薬のニトログリセリンの効果や副作用を中心に、他の狭心症治療薬についても紹介していきます。
これから治療を受ける方や、既に薬剤を服用している方は正しく硝酸薬を理解していきましょう。
狭心症とは
狭心症は虚血性心疾患の1つで、冠動脈が狭まって血流が悪くなった状態です。
同じ虚血性心疾患である心筋梗塞では冠動脈が塞がって酸素や栄養分が滞ってしまい、その先の心筋が壊死してしまいますが、狭心症は少し血流があるために壊死までには至らないとされています。
しかしながら、狭心症の発作が起きると胸の痛みや圧迫感が起こり、場合によっては心臓の痛みが伝わる時に他の神経に刺激が伝わることで背中や肩、首、腕までも痛くなることもあります。
この狭心症の発作は基本的に数分間で収まりますが、もし15分以上痛みが続くことがあれば心筋梗塞の疑いがあるので早急に医療機関を受診してください。
狭心症の主な原因は動脈硬化とされ、動脈の血管の弾力がなくなって硬くなったところにプラークや血栓ができることで、血液の通り道が狭まることで発症します。
これは喫煙や肥満、高血圧、高コレステロール、運動不足などが要因として考えられ、複数の要因が重なるとより発症リスクが高まります。
狭心症が疑われる場合は、心電図検査や超音波検査、血液検査などを行います。
そして、狭心症と診断された時には、薬物療法やカテーテル治療、冠動脈バイパス移植術などの治療を行います。
この薬物療法で使用される薬剤の1つが、硝酸薬ニトログリセリンです。
硝酸薬ニトログリセリンとは
硝酸薬は血管を広げて心臓の負担を軽くする作用を持つ薬剤で、狭心症の発作を予防する目的で使用する長時間薬剤と、発作が起きた時に症状を落ち着かせる目的で使用する速攻性薬剤の2種類があります。
ニトログリセリンの代表薬であるニトロペン舌下錠やミオコールスプレーは、狭心症の発作時に使用する速効性の薬剤です。
硝酸薬ニトログリセリンの作用機序・効果
硝酸薬のニトログリセリンは体内で代謝されると、最終的に一酸化窒素を生成します。
この一酸化窒素は血管壁などの細胞に作用して、狭心症で狭くなった冠動脈と全身の静脈を拡張し、心臓の負担を軽減することで胸の痛みや圧迫感を改善します。
ニトログリセリンは一般的な錠剤のように飲み込むと、肝臓で分解されてしまって効果が現れなくなってしまうため、錠剤を舌の上に置いて溶かしたり口内に噴霧して使用します。
このような理由から、ニトログリセリンは内服薬ではなく、舌下錠や口内噴霧スプレー、注射剤、テープなどの外用薬などが製品化されています。
硝酸薬ニトログリセリンの用法用量
ここでは硝酸薬ニトログリセリンの代表薬であるニトロペン舌下錠0.3mgとミオコールスプレー0.3mgの用法用量について解説していきます。
ニトロペン舌下錠0.3mgは通常成人は1回1~2錠、主成分として0.3~0.6mgを発作時に舌の上に置いて唾液で溶かして服用します。
ニトロペン舌下錠は服用後1~2分で効果が出るとされていますが、もし効果が感じられないような時には1~2錠追加して使用します。
ただし、1回の発作で3錠までが使用限度となっており、限度量まで使用しても効果が現れない時や、発作が15分以上続くような時には、すぐに医療機関を受診する必要があります。
一方で、ニトロペン舌下錠の1日の使用回数は決まっておらず、前の服用から30~60分経っているのであれば、使用することが可能です。
ミオコールスプレー0.3mgは成人は1回1噴射、主成分として0.3mgを舌の裏側へ噴霧して使用しますが、使用後、約3分経っても発作が改善されない時にはもう1回1噴霧まで行うことが可能です。
ミオコールスプレーを効果的に使用するためにも、噴霧する時にはスプレーを口に近づけて息を止めてから行うようにしましょう。
なお、ミオコールスプレーも一度の使用回数は2噴霧までと決まっていますが、1日の使用回数は決まっていません。
また、ニトロペン舌下錠やミオコールスプレーは血圧が急激に下がりめまいや立ちくらみなどが起こる可能性があるので、薬剤を使用する時は座るようにしてください。
硝酸薬ニトログリセリンの副作用
硝酸薬ではめまいやふらつき、頭痛、脱力感などの副作用が現れることがあります。
それに加えて、ニトロペン舌下錠では脳貧血や熱感、吐き気、ミオコールスプレーでは舌の痺れや痛み、発疹などが報告されています。
このような副作用が現れる可能性があることから、使用後の乗り物の運転や危険を伴う作業はしないでください。
硝酸薬ニトログリセリンの禁忌
硝酸薬ニトログリセリンが主成分のニトロペン舌下錠は、過敏症や重い貧血、低血圧、心原性ショック、頭部外傷、脳出血、閉塞隅角緑内障の方、妊婦は使用禁止です。
さらにホスホジエステラーゼ5阻害作用や、グアニル酸シクラーゼ刺激作用がある薬剤の服用中も禁忌となっています。
それに加え、原発性肺高血圧症や閉塞性肥大型心筋症の方、高齢者は注意して使用する必要があります。
また、利尿剤や三環系抗うつ薬をはじめとする様々な薬剤との併用で、血圧低下の副作用が強くなったり、ニトログリセリンの効果を弱めてしまう可能性があるので、他の薬剤と併用を希望する時には必ず医師や薬剤師に相談してください。
アルコールも悪影響を及ぼす可能性があるため、硝酸薬の使用中は控えましょう。
ミオコールスプレーもニトロペン舌下錠とほぼ同じ禁忌ですが、注意すべき属性に小児が加えられています。
飲み合わせに関しても様々な薬剤から影響を受けるため、自己判断で併用しないようにしてください。
なお、ニトロペン舌下錠と同様にアルコールも控えましょう。
ニトログリセリン以外の硝酸薬とは
ニトログリセリン以外にも、狭心症の治療で使用する硝酸薬には様々な種類があります。
ここでは代表的な硝酸薬を紹介していきます。
硝酸イソソルビド
硝酸イソソルビドにはニトロールやフランドル、硝酸イソソルビドといった名前の商品があり、剤型によって使用目的が異なります。
スプレー剤は発作時に使用する薬剤なのに対し、Rカプセルやテープ型は発作予防に使用する長時間作用持続型の薬剤として用いられます。
そして、錠剤は発作時は舌下に投与し発作予防として内服または舌下投与して使用するといったように剤型によって効果が少しずつ異なるのが特徴です。
ニトログリセリンや硝酸イソソルビドのような硝酸薬の使い分けに関しては厳密には決められていませんが、硝酸薬は耐性が問題となることがあるので、様々な薬剤を使用して耐性をつくらないようにすることがあります。
また、薬剤ごとに降圧作用による違いがあり、ニトログリセリンよりも硝酸イソソルビドの方が降圧作用は弱くなっていることから、患者さんの血圧の状態によって使い分けるケースもあるといわれています。
一硝酸イソソルビド
一硝酸イソソルビドは、アイトロールや一硝酸イソソルビドといった商品名の錠剤が販売されている薬剤です。
硝酸イソソルビドよりも肝臓の代謝の影響を受けにくく、肝機能の状態による治療効果の違いが現れにくいとされています。
そのため、硝酸イソソルビドよりも持続的で安定した血中濃度が得られます。
生活における狭心症対策とは
狭心症は自然に治る病気ではないので、発症したら医療機関での治療が必要になります。
しかしながら、これまでの生活習慣を改めていなければ、いくら医療機関で治療を受けていたとしても改善が遅れたり、場合によっては症状が悪化したりしてしまうかもしれません。
そのため、狭心症を改善するには心臓に負担をかけない生活を心掛けることが大切です。
狭心症は心臓に強い負担がかかると発作が起きやすくなることから、強い力をかける動作や継続した動作は避けるようにしましょう。
例えば、日常生活において食事、運動、入浴と動作を連続して行うのではなく、1つ行ったら約30分の休憩を取ってから次の動作に移るなどの工夫が必要です。
また、入浴時の寒暖差やトイレのいきみといったことも負担になるので注意してください。
ただし、安静にしすぎて運動不足になるとさらに動脈硬化が進行する危険性も高まります。
心臓に大きな負担をかけない程度の運動を行うことで血流が良くなることが期待できるので、医師の指示のもと少しずつ運動習慣を取り入れていきましょう。
反対に喫煙は動脈硬化を進行させてしまうことから、狭心症と診断された時には禁煙してください。
また、カフェインは心臓への刺激を強める可能性があるため、摂り過ぎないように気を付けましょう。
硝酸薬ニトログリセリンは狭心症の治療薬
狭心症は冠動脈が狭まって血流が悪くなることで胸の痛みや圧迫感といった発作が起きる病気で、手術や薬剤を使用して治療していきます。
狭心症の治療薬に用いられる硝酸薬は血管を広げて心臓の負担を軽くする作用を持ち、狭心症の発作を予防する目的で使用する長時間薬剤と、発作が起きた時に症状を落ち着かせる目的で使用する速攻型薬剤の2種類があります。
硝酸薬のニトログリセリンの代表薬であるニトロペン舌下錠とミオコールスプレーは舌の上で溶かしたり、舌の裏側へ噴霧したりすることで狭心症の発作を改善する効果があります。
これらは一度の発作に対する使用回数は上限が決められているものの、時間をおけば1日に何度も使用できるのが特徴です。
